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農業の現場 国民の声を聞け!

農業基本法改定でFFPJが院内集会
法案の撤回と再構築を

(右上から時計回りに)村上代表、池上さん、高橋さん、國母さん、下山さん、斎藤さん、纐纈さん、玉山さん

 国連の「家族農業の10年」に沿った農林漁業政策の実現に向けて活動している「家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン(FFPJ)」は3月14日、食料・農業・農村基本法改定に際して院内集会を開きました。

十分な議論がもっとも重大

 2月27日に閣議決定された同法改定案の問題点を明らかにし、小規模・家族農業が豊かになる改正に向けた運動をつくることを目的に開催。

 三重県の農家でFFPJ代表の村上真平さんは改定案について「農民がほぼ関わることなくつくられた」と批判。「農業では生活していけない、将来に希望が持てない状況に国が置いている中で、小手先で『稼げる農業』を掲げても全く持続可能ではない」と政府の根本姿勢に異議を唱えました。

 村上さんは政府が一番考えないといけなかったのは、1961年の旧基本法制定時にかじを切った「選択的拡大」への反省・検証だと主張。「耕種と畜産部門を切り離し、単独・大規模化を国として推し進めた結果を全く見ていない」と指摘しました。

 池上甲一FFPJ常務理事(近畿大学名誉教授)が新農基法案の問題点について講演。池上さんは「国民合意に向けた十分な議論が担保できていないことが最も重大だ」とし、期限ありきで不透明な決定過程を問題視しました。

 また担い手像の位置づけとして、改定案の「効率的かつ安定的な農業経営を営む者」、「多様な農業者」について言及。「農業政策の対象の位置づけがよく分からない」「経営体概念からの脱却が必要不可欠だ」と強調。「抽象性と個別性が同居して、全体像が見えない改正案になっている」と述べました。

地域の実情を知らないのでは

 生産者や消費者が「農村と都市の生活者の視点から」と題して発言しました。

 兵庫県丹波篠山市で夫婦で農業を営む玉山ともよさんは、「農水省や政策立案者はそもそもの状況が分かっていないのではないか」と危機感を表明。米を作っても食べていけない状況の中で「多角化・コスト削減・スマート農業の導入などで、農家自身が差別化・個別化で稼げるようにして、と言われてもできるわけないやん!」と地域の実情をふまえて訴えました。

 あいコープみやぎの高橋千佳理事長は、「食と農に関わる問題は組合員の関心が最も高い」と発言。あいコープとして「援農活動」や「地域循環型農業の推進」に取り組む中で、「小さな単位でも地域で農業を営める政策に税金を使ってほしい」と訴えました。

戦争国家への道 抱き合わせるな

 栃木農民連の國母克行会長は、「環境に配慮した農業や脱炭素社会を唱えながら、『輸入に頼る』『輸出で稼げ』というのは矛盾している」と指摘。「アグロエコロジーや真の有機農業がこれからの方向性を示すならば、この改定案は私たちを困難に向かわせる。撤回と再構築を望む」と表明しました。

 日本消費者連盟の纐纈(こうけつ)美千世事務局長は改定案の第1章の目的に、「自給率の向上を図ること」を明示するべきと強調。政府が言う「食料安全保障」は、有事の際の食料確保を念頭に置いているとし、「戦争する国づくりを進める動きに新農基法が絡め取られている」と強い危機感を示しました。

農民目線の改定 一緒に考えたい

 全国有機農業推進協議会の下山久信理事長(千葉県成田市の農家)は「改定案は国民のためにどうするのかという理念がない」と指摘し、「国の政策の失敗で人や農地をだめにした総括がない!継続審議にしないといけない!」と怒りを込めました。

 茨城県阿見町で家族農園を営む斎藤博嗣さん(FFPJ常務理事)は、「大規模化や省力化に向かう国の政策には、中山間地の田んぼでは応えられない。国土保全の観点からも兼業・家族経営を認めて育てていくべきだ」という地元紙に掲載された農家の声を紹介し、「改定案で考えるべきはこの視点だ」と主張。「“農家主体”で“農民目線”の改定を農水省とも一緒に考えたい」とまとめました。

家族農業こそ生産性が高い

 立憲民主、日本共産党の国会議員が連帯あいさつをしました。会場で発言を聞いていた国会議員からの「短い国会質疑時間の中で、有益な答弁を得るにはどんな問い立てが必要か」との質問に対し、愛知学院大学の関根佳恵教授(FFPJ常務理事)は「農業の生産性の測り方をぜひ質問してほしい。労働生産性や土地生産性が政府の視点だが、社会的生産性や資源エネルギー生産性といった指標が確立されれば、農場内や里山の資源を用いる農業をはじめとする小規模・家族農業こそ生産性が高いことが共有できるはずです」と答えました。

 FFPJとして今後、新農基法の問題点を国民に広く知らせ、国連「家族農業の10年」国内行動計画の策定を政府に求めて引き続き行動することなどを提言しました。院内集会の様子はFFPJのホームページ、ユーチューブで見ることができます。