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緊迫 農業基本法改定案国会審議

自給率向上投げ出す農水省
農業再生に役立つ基本法に
田村貴昭 衆院議員(日本共産党)に聞く

参考人に質問する田村議員=4月4日、衆院農水委員会

 食料・農業・農村基本法改定案が国会で審議入りし、異様な速さで審議が行われています。日本共産党の田村貴昭衆院議員・農林水産委員に国会での審議状況について聞きました。

公益的使命担う役割を明記せよ

 これまでの審議を通じて、今の農業の現状を打開しようとする姿勢がないことが日々明らかになっています。
 改定案には、農業の果たすかけがえのない意義や役割が規定されていません。私は質問で、旧農業基本法1条が「農業及び農業従事者が経済及び社会において果たすべき重要な使命にかんがみ、…農業従事者が所得を増大して他産業事業者と均衡する生活を営む」とされていることを紹介し、「公益的な使命を担う農業の重要性や役割を改定案に明記すべきだ」とただしました。
 今回の改定では「どうやって食料自給率を向上させるのか」に最も注目が集まっています。政府の本気度が試されています。しかし、坂本農水相をはじめ農水省は「自給率を上げる」とは明言しません。「自給率を確実に上げるのは難しい」とまで言っています。これが最大の問題です。
 38%まで下がり続けた食料自給率。これまで政府はその目標を一度たりとも達成したことがありません。そこをめざすべきなのに、あきらめてしまっています。
 4月4日に行われた参考人質疑で、6人の参考人全員に「自給率は何%必要か」を聞きました。どの参考人も最低45%で一致していました。農水省は、これさえ「めざす」とは言わない。国の使命を投げ出しています。

農業者の減少に政府は対策なし

 3月の本会議質問で岸田首相が「農業従事者減少の原因は人口減少だ」と答弁しましたが、この25年で農業従事者は5割も減っており、人口減少の比ではありません。政府に危機感がまったくありません。
 農水省は今後20年で基幹的農業従事者数が120万人から30万人にまで減少するとしています。基本法の改定で「農業従事者数を増やす計画をつくるのか」とただしましたが、農水省は「農業者の減少は避けられない」などと開き直っています。
 法案の条文に「農地の維持」と記述していますが、「農業従事者が激減する中、農地面積をどうやって維持するのか」との質問にも、坂本農水相は「少ない人数でより生産性を高める」と答弁するだけ。これでは、合理化、大規模化を進め、農薬・化学肥料に頼る農業を推進するというだけです。
 農業で生計が立てられなくなって離農していくのが現状です。政府の改定案では、農業に展望がもてず、生産に希望も持てません。離農促進法と言ってもいいぐらいです。

署名を積み上げ反対世論大きく

 今後、食料自給率向上や価格・所得保障など、法改正に必要な提案を行い、農業に希望が持てる基本法改定になるよう論戦をしていきたいと思います。
 衆院農水委員会は3月27日に審議入りしてから、4月5日までに、一般質問2回、参考人質疑1回が行われ、9日と11日に一般質問、10日に福島、宮城での現地視察を実施し、15日は北海道と鹿児島で地方公聴会を行う予定です。
 農民連の「食料自給率向上を求める署名」など、みなさんのたたかいに大いに励まされています。農業の再生に役立つ改定になるよう、ご一緒にがんばりましょう。