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第26回大豆畑トラスト全国交流集会開く

日本の食文化支える大豆をもっと知ろう
生産者と消費者が一堂に会し交流

大豆カレーを堪能しました

 第26回大豆畑トラスト運動全国交流会が3月19日、都内でオンライン併用で開催されました。今年のテーマは「日本の食文化を豊かにつむぐ大豆をもっと知ろう」。主催は、遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンです。

昼食交流会では大豆カレー堪能

 4年ぶりとなる昼食交流会は、秀明自然農法ネットワークのみなさんによる大豆カレーに舌鼓を打ちました。
 キャンペーンの纐纈(こうけつ)美千世さんが開会あいさつ。1996年、遺伝子組み換え大豆の輸入が解禁され、遺伝子組み換えで最初に私たちの食卓に上ったのは大豆だったことを紹介。当時の大豆の自給率は2%で輸入の遺伝子組み換え大豆にとって代わってしまうことに危機感をもち、国に頼るのではなく市民自ら国産の安全な大豆栽培に取り組み、応援しようとトラストというシステムでの大豆自給運動が始まったことを振り返りました。
 トークセッション「大豆ってすごい!~もっと知ってもっと食べよう」では、料理研究家の枝元なほみさん、日本スローフード協会代表理事の渡邉めぐみさんが日本の食文化にとって、なぜ大豆が大事なのかを討論しました。

報告する寺本さん

大豆料理楽しみ 在来大豆守ろう

 枝元さんは、干し納豆など大豆料理のレシピを紹介しながら、「同じ納豆でも作り方によって味が違ってくる」と説明。台所に立つ中で、「自分にいい」と思うものに価値があり、「子どもたちにその味覚を感じてもらうことがおいしさを伝えることになる。キッチンに立つことで、社会と生産者とのつながりもみえてくる。1日3回は社会を変えるチャンスがある」と呼びかけました。
 渡邉さんは、大量生産のファストフードに対抗してイタリアで発生したスローフード運動の歴史を振り返りました。日本人のソウルフードである、みそを在来大豆でつくることで、「地域の在来の種子を守ることにつながる」と力説。生産と消費、社会活動を結びつけるアグロエコロジーの重要性を訴えました。

大豆製品が多いフードテック

 科学ジャーナリストの天笠啓祐さんが「フードテックと大豆の最新情報」のテーマでミニ講演。世界の遺伝子組み換え作物の作付け割合は、大豆が74%で、食用油、油製品、しょう油など(油の搾りかすは飼料)に使用されています。日本の食卓に遺伝子組み換え大豆が出回る割合も約9割。遺伝子組み換え大豆栽培により、除草剤の使用量も増加し、グリホサート(ラウンドアップ)の汚染問題が深刻化しています。
 代替肉、培養肉、昆虫食などのフードテックが登場し、典型的な例として大豆ミート製品が多く流通。大半が輸入大豆であり、さまざまな副原料が必要で、塩分が多く、酵母エキスや調味料、砂糖、甘味料、香料など、人工的に作られた味であることを告発しました。

討論する(左から)天笠さん、渡邉さん、枝元さん

困難ななかでも作り続ける決意

 大豆畑トラスト生産地からの報告では、各地の生産者やトラスト運動に取り組む市民・消費者が発言しました。
 福岡県の、みのう農民組合は、福岡県農民連の藤嶋嘉子事務局長がオンラインで参加。25年間、運営の中心になってきた佐々木督文さんが急逝し、豪雨による種まきの遅れ、秋の高温、河川のはんらんによる土砂の住宅・農地・ハウスへの流入など、困難ななかでも生産とトラスト運動を継続してきました。
 会員からの継続を望む強い声に押されながら、交流を続け、地元の大豆を味わってもらうことで、どこの誰がつくった大豆なのかを理解して消費者が選べることで、つくる側の責任と自信につながるトラスト運動の継続への強い決意を述べました。
 千葉県の東総農民センターの生産者、寺本幸一さん(匝瑳=そうさ=市)は、トラクター、コンバインなど農機具の高騰や10㌃あたりの所得が1万円にしかならない大豆づくりの困難さを紹介し、昨年は夏に雨がまったく降らずに大不作だったことを述べました。
 今は荒れ地を耕す作業を行い、農村から農家がいなくなってしまった現状から、「今の農家だけでは今後の農業は支えられない、農業が好きで意欲がある人はぜひ就農してほしい」と呼びかけました。
 ほかに、山形、茨城、千葉各県の生産者・農家グループのほか東京都の消費者グループも発言し、栽培の苦労や後継者対策について報告しました。