農政審企画部会・基本計画案 食と農の危機をさらに加速 詐欺・目くらましの自給率目標(2025年03月24日 第1643号)
改定「食料・農業・農村基本法」に基づく新たな食料・農業・農村基本計画策定のための農水省「食料・農業・農村政策審議会」企画部会が3月14日に開かれました。
基本計画案は、農地の大区画化と集約化を推し進める一方、「令和の米騒動」対策として根本的な政策転換が求められているにもかかわらず無策で、食と農の危機をさらに加速させるものになっています。
食料自給率向上目標について、これまでのカロリーベース目標は45%で現状のまま明記されましたが「摂取カロリー自給率」が新設されました。これは、基礎代謝に必要な1850キロカロリーを分母にしたものです。飢餓スレスレのカロリーを分母にすれば、自給率は実質38%から名目45%に跳ね上がります。これを53%に水増しするという詐欺的な目くらまし目標で、しかも、カロリーベース自給率より上に位置付けられています。
輸出促進(海外から稼ぐ力の強化)が食料安全保障よりも上位に格上げされ、農林水産物の輸出額、食品産業の海外展開による収益額、インバウンド(訪日外国人)による食料消費額目標が掲げられています。
米についても、輸出のために規模拡大とスマート農業で生産コストを1俵9500円にまで引き下げるとしています。
農業所得を支える直接支払い(所得補償)制度は何もなく、価格転嫁についてもコスト引き下げのかけ声だけ。
担い手確保について、49歳以下の生産者を増やすことは明記されましたが、JAが試算している2040年に30万戸まで生産者が減ることは放置したままです。
基本計画案は企画部会で出された意見による若干の修正、形ばかりのパブリックコメントを経て、3月21日の企画部会で再度、確認されます。
石破首相の10万円商品券問題で国会がどうなるのか不明の政局情勢になっており、今後の世論次第で石破内閣が退陣に追い込まれる可能性もありえます。
引き続き、自給率向上、所得補償の実現、実効ある担い手確保を求めて、声を上げましょう。
(次号で計画案の問題点を詳しく特集します)