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市民のカンパで運営 日本唯一の分析施設 農民連食品分析センター 輸入食品の実態や水質・土壌汚染を調査(2025年03月31日 第1644号)

 農民連食品分析センターは農民や市民のカンパをもとに運営しています。企業などに忖度(そんたく)せずに、輸入食品の実態や、各地の水質・土壌汚染の調査に、長年取り組んできました。分析センターの調査事例を紹介します。

PFAS水道水からも検出 市販の浄水器である程度除去も

日々検査に奮闘する分析センターのメンバー

 今注目を集めている「永遠の化学物質」PFAS(ピーファス)。炭素とフッ素が結合した化合物の総称で、水や油をはじく、高熱や酸、アルカリに強い、光を吸収しない、分解されにくいといった工業的に便利な特徴を持ちます。
 しかし、その一部に免疫力の低下や甲状腺疾患、腎臓・精巣がんなど疾病のリスクが高まる恐れがあることが明らかとなってきました。
 アメリカでは2024年からPFASの一種であるPFOS(ピーフォス)とPFOA(ピーフォア)に対しそれぞれ、1リットル当たり4ナノグラム(1ナノグラム=10億分の1グラム)という厳しい基準を設定しました。
 日本では19年に水道水ではPFOSとPFOAの合計で50ナノグラム(1リットル当たり)の暫定目標値を設けていましたが、24年12月には超過時の改善が義務付けられる水質基準に移行することが決まり、26年6月に施行される予定です。
 様々な地域で調査が行われ、河川水や地下水、水道水からも一定濃度の検出が報告され始めています。

センターが試験的に調査中

 農民連食品分析センターでは河川等の調査を行う一方、予備調査として、家庭用の浄水器や浄水蛇口でPFASを減少させるのか調査を始めました。まだ系統的なデータとはなっていませんが調査例を紹介します。

調査例1 T社製蛇口一体型浄水器(表(1)

 新品のカートリッジを使用した場合はPFASが除去されていましたが、1カ月で除去率が測定誤差範囲に収まる10%程度にまで落ち込んでいます。水流の勢いや使用環境にもよりますが、定期的なカートリッジの交換が必要と思われます。

調査例2 100円ショップの蛇口取りつけ型浄水蛇口(表(2)

 100円ショップで販売されている、蛇口にはめこんで使うタイプの浄水蛇口です。除去率は6%程度と測定誤差範囲内でした。

調査例3 P社の浄水器(交換目安のデジタルメーターが1500/4000)(表(3)

 交換目安の3分の1程度の使用で、約80%の除去率がありました。
 まだ試験的な調査のため、測定条件の検討や除去に有効な活性炭の量、交換の目安となる時期など、浄水器メーカーとも協力しながら調査を進めていく計画です。

 農民連食品分析センターは水質調査と並行して浄水器のPFAS除去調査にも引き続き取り組んでまいります。また、行政が調査に乗り気ではない地域でも、市民が調査運動に乗り出せば行政の姿勢も変えることができます。お住まいの地域で調査をされる場合は農民連食品分析センターまでご相談ください。

遺伝子組み換えワタが流通 知らずに栽培するケースも

播(は)種時には注意を不安な種子は和綿に変更も

 遺伝子組み換えワタは法律上、一般ほ場で栽培することはできない仕組みになっています。しかし、遺伝子組み換えワタであることを知らずに栽培しているケースがあるのではという懸念があり、農民連食品分析センターでは2018年から継続的に調査を行ってきました。
 結果を表(4)に示します。26検体中5検体から遺伝子組み換えワタが検出されました。検出されたのは、害虫耐性を持つ品種と、除草剤(ラウンドアップ)耐性を持つ遺伝子組み換えワタでした。
 今回の結果は氷山の一角で、もっと多くの地域で遺伝子組み換えワタが知らずに栽培されている可能性があります。お近くでワタを栽培されている方がいらっしゃいましたら、情報をお伝えください。
 対策としては、不安な種子は一度廃棄し、和綿の系統に変更する。または適切な管理ができている種子メーカーのものに切り替える、などがあげられます。
 遺伝子組み換えワタの栽培に関する調査は、今後も継続していく予定です。自身の栽培するワタの種子が遺伝子組み換えかどうかを確認されたい場合は、PCR精密検査をご利用ください。社会貢献性が認められる取り組みや団体、個人の場合は、特別な価格での対応が可能な場合がありますので、お問い合わせください。