埼玉・加須市酒米生産者協議会 堆肥作りを視察 農薬・化学肥料使わず有機農法で 羽生市の熊倉光男さん(2025年04月21日 第1647号)

熊倉さん(中央)の話を聞く参加者
埼玉県の加須市酒米生産者協議会は、化学肥料や農薬を使用せず生物や自然環境に配慮しながら堆肥作りを行っている羽生市の熊倉光男さん(84)の堆肥舎を訪問し、13人が視察しました。
もともとバスの運転手だった熊倉さんは腰を痛め、家業だった米農家を35歳で継ぎました。堆肥作りは九州のお茶屋さんに学びに行きました。今は豚ぷんともみ殻で堆肥を作っている熊倉さんですが、今の方法に落ち着くまでには、堆肥にできるものは一通り試して勉強したそうです。
酒かすや牛ふん 残飯も試したが
2003年頃から160ヘクタール分のもみ殻を集め始め、30ヘクタール分のもみ殻に酒かすや油かす、学校給食の残飯を混ぜたこともあったとのこと。しかし、酒かすや油かすは青カビが発生し、学校給食の残飯はパンに使われているイースト菌の影響で思うように熱が出ず、塩分も入っておりバクテリアの増殖を防いでしまいます。
また、牛ふんは、牛がにがり(塩)をなめるので塩分を含んでおり、塩を分解するために消石灰が添加されているため、堆肥にはなりません。豚ぷんも、普通の食品残さが餌の豚ぷんは使わずに、熊倉さんの飼料米を使った豚ぷんを使っています。
バクテリアは熱を出す菌であり、火がついてしまうので、今は循環型の発酵で種菌だけで作っています。かつては、アルカリが多い鶏ふんとのバランスで温度が200度以上になり、火が付いて消防車が来た経験もあるそうです。
温度や水分の調整が大事

熊倉さんの堆肥
温度が出ているうちはガスが出て臭いもしますが、1カ月たつと堆肥は臭いもほとんどなくなり、水分も38%を保つようになります。放線菌を育てて、温度を80度に保たせるなど、温度や水分調整をすることが大事だと言います。
土に吸着するステビア(雑草の粉末)を混ぜることで、弾力構造で乾いてもほこりが出ず、水分を含んだ堆肥になります。
熊倉さんは、白米に玄米30%を混ぜて食べていますが、この堆肥で育てた米は味が濃くなり、健康な身体を作るにはとても良いそうです。
帰りにはお土産に米袋いっぱいに堆肥をもらい、みんなで実験してみることにしました。交流では、もみ殻を持ち込めば私たちの堆肥を作ってもらえるのかも検討していただきました。
堆肥の製造工程や土に与える効果などを学んだ視察となりました。
(埼玉農民連東部センター 伊澤潔美)