旬の味(2025年06月02日 第1652号)
寄稿させていただいてから4年ほどになるかと思う。最後に私の農業に対する考えを綴らせてもらい締めさせてもらいたい▼農とは人という種が他の生き物から命を頂き、それを糧とする行いである。だからこそ尊く、農が人を人たらしめた要素の一つであることは間違いないだろう。そして業とは、一般に対価を得る労働の意だが、仏教用語では因果という意味合いもある▼私たちが今考えるべきは、こちらの因果、つまり人の行いは常に自分に返ってくるということではないか。他の生物から命をより多く搾取する行いを是とする風潮は、いずれ人という種全体に大きな報いとなって返ってくるのではないか▼本来、私たちが行ってきた農業とは、命を育み、分け合い、時にはうまくいかず、多くの命が失われるからこそ、そこに神秘性を見いだし、崇め尊んできたのではないか▼私はもうかる農業よりも、小さな星が暗い夜に拙いながらも多く瞬くような、日本の山村の農業にひかれ、これからも続いてほしいと願う。(T)