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全国災対連が被災地能登の現地調査 輪島市の医療現場の声聞き取り 国への要請につなげる(2025年06月02日 第1652号)

道路陥没、車故障、歩行者ケガ 医療費減免延長なければ受診控え

状況を説明する上浜事務長(正面中央)

 災害被災者支援と災害対策改善を求める全国連絡会(全国災対連)は5月16日、能登地震と水害の被害調査を実施し、輪島市の被災者などから状況を聞き取りしました。今回は輪島診療所の上浜幸子事務長の話を紹介します。

輪島診療所 上浜幸子事務長

輪島市の農民連会員、山崎信寿さんの田んぼの被害も視察しました

 診療所は地震直後の1月4日から診療を再開しました。1年たって直っていないのは診療所前の下水のところが壊れていて、一部駐車場がぼこぼこのままです。医療機械の故障などは医師会からいただいたり、保険で直したりなどで診療は続けられています。
 介護事業は5日に断水のまま自衛隊のお風呂などを活用して再開。現在、デイサービスは震災前以上の利用があります。輪島市内の介護事業所で100%建物が直ってやっている事業所がほぼない状況のなかで、建物が大丈夫だったのは本当に幸運でした。地域から応えきれないほど利用の要望をもらっており、何とか応えていきたい。
 職員等の生活の状況は、仮設住宅に入居している職員が現在も半分近くいます。医師は、一人が仮設、もう一人は震災後からずっと診療室に寝泊まりです。医師住宅が全壊し、市内にもともと少なかったアパートも多くが使えなくなっており、入居できる住宅がありません。仮設住宅は足りているといわれていますが入れない人も多く、ある職員は穴水町の仮設から通っています。輪島で働きたくても、住む場所がなくて金沢に引っ越した人もいます。
 医療の患者数は震災前の8割まで回復するも赤字で、これ以上の回復は見込めません。介護の方は累計でも黒字化できました。ただ訪問介護は介護報酬の24年改定で、どれだけ努力しても黒字にできない状況です。全国でも同様の問題は多く、このままではつぶれていく医院が増えるのではないでしょうか。
 他の医院も震災前の、9割まで回復したところもあれば、震災前の5割程度という医院もあります。介護では重度の方が輪島に帰ってこられず、ショートステイも使えない。施設も少ないことから、在宅の患者さんが減っており医師会でも県に要請を考えています。
 3月31日に国が出した医療費の一部負担金の免除の9月まで延長の通知が4月4日に保険医協会から来ました。診察代だけではなく薬代の負担がかなり大きく、利用者の半数近くが減免を利用しており、延長がなければ受診控え・受診をしないということが考えられます。
 道路は今も定期的に陥没が起こります。車は故障で済みますが、歩行者でケガをする人が増えています。歩道も段差が多く今でもほとんど直っていません。金沢では市に言うとすぐに直されており、奥能登の格差を感じています。

 次回は被災農家の話を紹介します。