小泉新農相で米の需給と価格安定はできるのか 農産物輸入自由化、農業つぶし政治進めた張本人 米増産へ農政の大転換を!(2025年06月02日 第1652号)
江藤拓前農相は、米価が昨年の2倍に高騰し、高くて買えないという庶民の感情を逆なでしただけでなく、農民の「去年安く出荷したのになぜ消費者米価はこんなに高いのか」という憤りにも火をつけました。
米価高騰は自民党政治の結果

新農相の小泉氏(左)と石破首相
米価高騰は、農民に「需要に応じた生産」で需給ギリギリの生産調整(減反)を押し付け、米価格は市場に丸投げで政府は介入しない、主食の安定供給に責任を果たさないという自民党政治の結果です。米不足を認めず、備蓄米放出も「流通の目詰まりの解消」「価格には関与しない」と強弁し、政府備蓄米を民間備蓄倉庫に移動させただけでした。
石破首相は、米価格の高騰が続けば参議院選挙で逆風になるとして、後任に世間受けのいい小泉進次郎氏を起用。5月21日の党首討論では、5キロ当たりの全国店頭平均価格を3千円台に下げるとし、政府が価格に介入することを言明しました。
早速、小泉新農相はテレビ各局に連続出演し、「消費者の皆さんの目線に立った農政を進める」「備蓄米5キロ2千円台に」とぶちあげています。選挙目当ての消費者米価の引き下げだけが政治目標です。入札方式をやめ、随意契約への変更とあわせ、「需要があれば備蓄米を無制限に出す」とも述べました。
しかし、政府備蓄米は91万トンのうちすでに31万トンを放出し、さらに30万トンを出せば残りは30万トンしかありません。
それも22年産の古古米とさらに古い米です。無制限に出すとすれば、昨年11月の財政制度等審議会建議の要求通り、「いざというときにはMA(ミニマムアクセス)米の活用」しかありません。米危機に便乗し輸入米をさらに流通させるという“火事場泥棒”を許すわけにはいきません。
備蓄米放出で米価乱高下の恐れ
備蓄米放出で政府備蓄倉庫は空っぽになる一方、6月末の全国農業協同組合連合会(JA全農)や大手集荷業者の民間在庫は適正在庫と言われる180~200万トンを大きく超えると予想されています。従来の農水省の政策では、適正在庫プラスマイナス20万トン前後で、米価格は乱高下し、そのしわ寄せは生産者に押し付けられてきました。
米の絶対量が不足する中で各地のJAは田植え前から去年よりも高い概算金や最低保証価格を農家に提示しています。
しかし、農家がこれからも安心して米を作り続けられるのでしょうか。
反省もなく従来通りの方針掲げ
今回の米不足と価格高騰の最大の原因は、時給10円で米作りをさせて20年間で120万戸も離農に追い込み生産者が減ったことです。
しかし、小泉新農相は農村現場の疲弊した実態には一切触れず、反省もありません。
そもそも、小泉進次郎氏はTPP(環太平洋連携協定)推進論者として2015年10月、TPP「大筋合意」後、自民党農林部会長に就任し、「農政改革」と称し、「補助金漬け農政との決別」を掲げ農業生産を支える各種の補助金を削り、農協解体攻撃を行ってきた張本人です。
さらに15年のオーストラリアとの自由貿易協定(FTA)を皮切りに、18年にCPTPP(11カ国のTPP)協定、19年に日EU経済連携協定、20年に日米FTA、22年にRCEP(地域的な包括的経済連携協定)を結び毎年のように農産物の輸入関税を削減し、日本の農家に離農を余儀なくさせてきたことが、今日、円安と相まって食料品価格の高騰を招いている原因です。
就任会見では「食料・農業・農村基本計画」に基づき、規模拡大と農地の大区画化、スマート農業の加速化など相変わらず従来通りの方針を掲げ、「減反をやめ、作るなという農政ではなくて、意欲を持って作っていただいて、その余った部分は輸出」などと無責任な発言を繰り返しています。
いま政府に求められているのは、国内の米不足を認め、米増産へ舵(かじ)を切ること、そのために欧米諸国並みに米生産農家への所得補償(直接支払い)と価格保障を実施する政策への大転換です。これ以外に根本的な打開の道はありません。