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一日も早い農地の復旧を 被災地で奮闘する生産者(2025年06月16日 第1654号)

能登・被災地調査(2)

 農民連災害対策本部は5月15日、地震と水害の被害を受けた会員の被害と現状の聞き取り調査を行いました。  前号に続き災害に負けず、再開に向けて奮闘しているお二人の様子を紹介します。


復旧予定が水害で吹き飛ぶ 来年は作付け再開したい 漁を再開し、港に活気が

乾燥機に補助決まり“やる気”出てきた!

輪島市門前町上大沢 中村和規夫さん(67) 農業・漁業

小さな漁船が停泊できるようになった大沢漁港

 自宅は地震によるがけ崩れで全壊し、今は仮設住宅に入居しています。
 地震により田んぼの隆起や沈下が起こりましたが、去年はできるところだけでもと田んぼを一部作付けしました。苗を300箱分植え、稲刈りを終えて、明日は畑に植えたかぼちゃとネギ(農協出荷)の収穫をしようとしたところ9月の豪雨に見舞われました。
 経験したことのない雨量が短時間で降り、地震で崩れていた土砂や流木が田んぼに流れ込みました。現在も土砂・流木は撤去できていません。
 水害前に農地の復旧事業も実施が決まっていたのですが、その予定がいつになるかわかりません。簡易水道のポンプも破損し停止したままです。
 集落から避難するときは地震の時より水害時の方が「もうだめだ」という思いが強くなりました。
 トラクターは無事でも納屋にあった乾燥機は水害の被害にあい、収穫したばかりの米も水につかってしまいました。2階にあって無事だったお米は農民連に買い取りしてもらい、避難者の支援米になっています。

久しぶりの出漁 漁の楽しさ実感

上大沢漁港で説明する中村さん(左)

  漁業も営んでいますが、港も3~4メートルほど隆起して出漁できなくなりました。さらに大雨で漁港に土砂が大量に流れ込み、港外まで土砂で埋もれるほどに堆積しました。
 今は港の浚渫(しゅんせつ)現場で働いています。上大沢漁港は再建せず、隣の大沢漁港に集約しています。小規模の浚渫が完了し、小型の伝馬船が数隻停泊できるようになりました。
 「魚が見えないなあ」と思っていましたが、出漁し網を入れたらめちゃくちゃ魚が網にかかりました。釣りでも大きいアジなどが釣れていると聞いています。漁ができるようになったことで港に人が集まり活気も出てきました。水揚げを見て多くの人から「自分も漁に出たい」と相談が寄せられています。生業(なりわい)としてだけではなく、一度離れたことで海に出る楽しさを実感したのではないでしょうか。被災家屋の解体も進む中で、集落でできることが何もなければ人は戻ってきません。そういう意味でも漁の再開は大きいです。
 「事業をやれるのかわからない」と言われて、申請手続きを中断していた乾燥機の買い替えの補助金が「通る見込みだから、購入手続きを進めて」と県から連絡がありました。新しい機械が来るとなると、やはりやる気が出てきます。
 今年は無理ですが、来年は被害の少ない農地を復旧して、無理のない範囲で田んぼの作付けを再開したいです。流木が残っている所もカボチャを植えられないだろうかと考えています。
 電気も5月中に通電できる見込みと知らせがありました。電気が来れば簡易水道の再建に向けての検査も進みます。
 護岸工事など危ないところから治すのは当然ですし、道がつながっていなければ田んぼを直しても耕作できませんが、少しずつでもよいので、農地の復旧もできるだけ進めてほしい。私もやれてあと15年。早く復旧してくれないと、みんなできなくなってしまいます。