全国の小型いか釣りが禁漁に! TAC制度の見直しを要求(2025年12月15日 第1679号)
「浜の声を聞け!」漁民が東京で要求実現行動
沿岸漁民は決して取りすぎていない!!
「私は岩手県から来たイカ釣り漁業者です。10月末からイカ漁に出ていません。事前通告もなしに禁漁になりました。私たちにも生活があります。どうか沖に出てイカを取れるようにしてください」--
農水省前で声をあげる沿岸漁民の皆さん
11月28日、東京都千代田区の農林水産省の前に全国の沿岸漁民が集まり窮状を訴えました。
JCFU(全国沿岸漁民連絡協議会)が主催したこの日の「沿岸漁民要求実現11・28東京行動」には北海道、青森、千葉、長崎、沖縄などの各地の沿岸漁民ら約60人が参加。水産庁長官に面会し、いま大問題になっているスルメイカ漁に関する要望書(漁獲圧力が高い「沖合底びき網漁業」などの許可見直しと規制強化など)を手渡しました。
そもそもの割り当て量が大問題
水産庁との交渉では制度見直しと管理体制の強化などを訴えました
この日の「東京行動」で行われた水産庁担当官との交渉では、沿岸漁民を苦しめる今のTAC制度に対し、たくさんの怒りの声が出されました。
沿岸漁民は「資源管理は当然必要」とした上で、「そもそもTACの割り当てがおかしい。2000隻以上の小型いか釣船への追加後の配分が5800トンで、なぜ20数隻の大臣許可の沖合底びき船が7800トンなのか!」とぶつけました。担当官は「ルールに基づいて公平に配分している」との答弁に終始。「どこが公平なのか。それぞれが取れる量を船の数で割ったら分かる!」などの声が相次ぎました。
また、「小型いか釣」が操業停止状態の中、大臣許可である企業型の「沖合底びき網漁業」「大型いか釣漁業」の船が操業を継続、スルメイカを取り続けていることを重大視。担当官は「両者の漁獲量はまだTAC内だから操業を続けている」と答えましたが、沿岸漁民は「資源管理が重要と言うなら、親イカを他の魚と一緒に根こそぎ取る大型船の沖合底びき網漁業の規制こそ重要だ」、「そもそも大臣許可の大型船がイカを取れるようになってから資源が激減した」などと強く反論しました。
なぜ八戸沖で好漁だったのか
青森県奥戸(おこっぺ)漁協の能登勝男さんは、「なぜ八戸沖で今年イカが好漁だったのか」を担当官に説明しました。能登さんは、「例年なら私たちがイカ釣りをする漁場で沖合底びき網が大型網を引くため、小型漁船はなかなか釣れなかった。でも今年は海底にへばりつく資源が豊富で、沖合底びき網漁船は早々に網いっぱいとなり港に帰っていった。その後で私たちが釣るからイカが取れた。水産庁の予想以上にイカ資源は多かった」と力説。これに「イカの資源評価がちゃんとできていない」、「TAC数量の設定は6~8月の漁を見てから決めるべき」などの意見が続きました。担当官は「スルメイカは他の魚種と違い、1年サイクルなので評価が難しいが努力している」などと答えました。
制度として失敗している
全国で「小型いか釣」が操業停止になったことで、これから漁期を迎える日本海や九州への対応をどうするのか問われた担当官は、「余った枠などを活用して試験操業などの形をとれないか検討している」と回答。会場から「クロマグロの沿岸漁業の停止と全く同じことが起こっている」、「資源管理と漁民の暮らしが両方成り立つことがTACの前提なのに、制度として失敗している」、「海外ではTACいっぱいに取っても生活できなければ補助や補償がある」、「イカを生業(なりわい)として、針1本で1匹を釣る資源に優しい漁業をしている沿岸漁民が一番苦しめられるのはおかしい!」という切実な声が噴出しましたが、担当官は「私たちとしてはTAC制度のもとで適切に資源管理を行う立場にある」との答弁に終始しました。
地元で声を大きく上げよう
JCFU事務局長でFFPJ(家族農村漁業プラットフォーム・ジャパン)副代表の二平章さんは、「アメリカでは漁獲圧力の強い沖合操業の底びき網やまき網にはTAC制度を適用し、沿岸漁民には適用していない。TAC制度を導入するEUでは、沿岸漁民へのTAC割当率を大きくとって沿岸小規模漁民の生活維持に力を入れている。日本は企業型の大型漁船を優遇し、実績主義でそのままを割り当てているからこのような問題が起こる。資源に優しい沿岸つり漁民は決して取りすぎてはいない。それぞれの地元で、沿岸漁船にTAC制度を機械的に適用する今の水産庁の政策に反対する声を大きくしていこう」と呼びかけました。
TAC(タック)制度とは
日本の漁業政策における資源管理は、TAC(漁獲可能量)による管理を基本とし、毎年の漁獲量がTAC設定数量を超えないようにしています。
水産庁は現在サンマ、スケトウダラ、ズワイガニ、クロマグロなど8魚種をTAC対象に選定。毎年決められるTAC総量を「大臣管理」区分と「都道府県知事管理」区分に配分します。
対象魚種であるスルメイカの22~24年のTACは7万9200トンに設定されていましたが、実際の漁獲実績はここ5年で4万トンを割り込み、23年は約1万5000トンと過去最低となりました。
これらの漁獲実績と資源再建計画のもと、水産庁は今年2月に「令和7管理年度(25年4月~26年3月)のスルメイカTACを1万9200トンとする」ことを発表。この1万9200トンを「大臣管理」に8300トン、「都道府県」に4200トン、「留保」に6700トン配分するとしました(留保とは漁業の実態に応じて追加配分するための枠)。
JCFUのイカ釣漁業者らは、「大臣管理」区分の5トン以上30トン未満の動力漁船に分類される「小型するめいか釣り漁業」(以下、「小型いか釣」)です。届け出船数は全国で2000を超えています。その「小型いか釣」に当初配分されたTAC割当量は2800トンです。
今年、青森県の八戸沖でスルメイカが久々に局所的に好漁となり、2度の期中改訂で「小型いか釣」のTACは5757トンに増えましたが、漁獲実績は約7800トンを超え、10月31日に「小型いか釣」に対して「採捕停止命令」が発出。いま全国の小型いか釣漁民は禁漁状態にさせられています。

