旬の味(2026年01月12日 第1682号)
10年以上前、新聞「農民」に掲載されていた千葉の「野菜宝船」の記事が、鮮烈に心に残っている。瑞々しい野菜で精巧な宝船を築き上げるという、その豊かな発想と美しさに魅了され、「いつか自分もこの手で」と強い憧れを抱いた▼その思いは、畑で土に向き合い、汗を流す日々の中でも折に触れて蘇り、私の静かな目標として心の奥深くにずっとあり続けてきた。やがて縁あって、地元の宮大工に全長2メートルもある立派な宝船を製作していただいた▼そこに、手塩にかけて育てたダイコン、キャベツ、ハクサイを土台として据え、色とりどりの旬の野菜と黄金色の大きな稲穂を載せ、3年前から神社へ奉納している▼野菜宝船は、五穀豊穣を願う感謝の象徴であると同時に、日々の農の営みそのものを映し出す鏡のような存在だ。農業は単に作物を育てるだけでなく、人や地域、伝統文化を未来へつなぐ大切な仕事である。人が自然とまねしたくなるような農業者でありたいと、完成した宝船を前にするたびに思う。(み)

