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農業基本法改定案衆院農水委 地方公聴会を傍聴して(2024年04月29日 第1599号)

 衆院農水委員会は4月15日、農業基本法改定案の地方公聴会を北海道と鹿児島で行いました。北海道農民連の富沢修一書記長と鹿児島県農民連の園山一則会長の傍聴記を紹介します。



切迫感に欠けた地方公聴会
北海道農民連書記長 富沢 修一

 札幌市内で行われた地方公聴会では、「過度の輸入依存からの脱却」「価格保障、所得補償が必要」「夢、希望ある食料生産が必要」「なぜ食料自給率の目標が達成されなかったのか検証が必要」などの意見が出されましたが、早急に抜本的な対策をとらなければ食料を生産できない国になる瀬戸際にあることが、残念ながら切迫感をもって語られませんでした。
 北農(JA北海道)中央会の樽井功会長は「大筋で農基法改定案を支持する」と述べ、議員からの質問に「自己責任でしっかりやっていく努力が必要」「畑地化で大きな交付金を農水省からいただいている」と答え、自分が所属する農協ではさらに輸出米を増やすことを公言する有様でした。
 輸入依存を危惧する意見は出ても、なぜ輸入が増えたのか、輸入を増やしてきた政治への批判を語る人はいません。
 自助努力と自己責任の呪縛で、いろいろあっても自分や、自分たちが残っていけば良しとするような、セレモニー的な公聴会の印象をぬぐえませんでした。


農業の現状への危機感なし
鹿児島県農民連会長 園山 一則

 鹿児島市では、4人の参考人が陳述に立ち、農福連携で有機農業をしている方は、幼稚園の給食にも提供しており、「枯れ草や竹など未利用資材を活用して肥料をつくることによってよい野菜ができる」と述べました。
 農産物の輸出について、「輸出品の多くは加工品。輸出は農業振興につながらない」との陳述もありました。
 ほかに「農産物の生産コストを価格転嫁できる仕組みをつくるべきだ」という意見が出る一方で、「スマート農業をもっと推進すべき」「地球温暖化は科学的根拠がなく、国連があおっているだけだ」などのひどい陳述もありました。
 公聴会は全体的に、農業の現状への危機感がほとんどなく、農業の厳しい現実にふれることはあっても、その打開策も示さず、誤った政策の羅列にすぎませんでした。
 食料自給率向上について質問したのは、日本共産党の田村貴昭議員だけで、質問に対する回答でも自給率にふれたものは皆無でした。
 肝心要の問題を避ける与党議員の姿勢には大いに疑問を感じました。