アイコン 新聞「農民」

衆院での農業基本法「改定案」の強行に抗議し参院を舞台に廃案を求めてたたかう(2024年04月29日 第1599号)

2024年4月19日 農民運動全国連合会会長 長谷川敏郎

 一、4月18日に衆議院農林水産員会は、「食料・農業・農村基本法改定案」を一部修正して賛成多数で可決し、翌19日の衆院本会議で可決して参議院に送付された。「改定案」には自民党、公明党に加えて日本維新の会が賛成し、立憲民主党と日本共産党、国民民主党、れいわ新選組は反対した。

 農民連は、食料・農業の危機打開には全く役に立たず、国民に食料を安定的に供給する政府の責任を投げ捨て、さらに危機を加速させる「改定案」を強行した自公、維新に強く抗議する。

 二、国民の不安は、ウクライナ危機や気候危機、輸入食品や生産資材価格の高騰の一方、国内の生産基盤が衰退し続け、食料自給率が38%にまで低下している現状で、食料の安定供給が本当に保障されるのかどうかにある。改定基本法に求められているのは、これまでの輸入自由化や新自由主義農政から、食料自給率を向上させる方向に農政の舵(かじ)を転換し、生産基盤を強化する方向に踏み出すことにある。

 ところが「改定案」は、これまでの農政に対する何らの反省もないまま食料自給率を向上させる政府の責任を放棄し、一層、食料の外国依存を強めるものになっている。

 また、今後、農業の担い手が30万経営にまで激減することを前提に、減少を食い止めることも、新たな担い手を育成する姿勢もない。国会での野党の追及に対して、政府は輸入の強化とスマート農業の推進、ひとにぎりの大型化した経営の支援で食料は確保できると強弁した。極めつけは4月2日の農林水産委員会で坂本農相が「食料自給率を向上させることは困難」と答弁したことである。

 「改定案」は第24条で「不測時における措置」を新設し、「食料供給困難事態対策法」を国会に提出している。平時の備えを放棄したまま、不測時には罰則を振りかざして生産と食料、流通を統制する「有事食料法」とセットであることも重大である。

 三、異例なのは12項目にも及ぶ「附帯決議」が行われたことである。

 「附帯決議」は、国内生産の増大を通した食料自給率向上、農業所得の確保による農業経営の安定、種子の供給など、野党修正案の一部を拾い集める形で「改定案」が欠落させていた事項を列記している。この間の農民連などの運動や世論、国会論戦などで追いつめられた結果であるが、同時に、「改定案」が欠陥だらけのボロボロ法案であることを浮き彫りにしている。

 「改定案」の欠陥は法律の修正で正されなければならない。これまでも悪法を強行する度に「懸念事項への配慮」として付帯決議が幾度も議決されてきたが、政府による「配慮」が行われたことは事実上なかった。

 四、衆院での可決が強行されたが、たたかいはこれからである。参議院を舞台に「改定案」を廃案にするために「食料自給率の向上を放棄した改定案はいらない」「自給率向上を政府の法的義務にせよ」の世論と行動を大きく広げることを強く呼びかける。

 岸田内閣は、裏金問題、アメリカと肩を並べて戦争する国づくり、物価高騰から国民を守ることへの無策などで国民から不信任を突き付けられた内閣であり、そもそも〝国家100年の計〟に関わる重大法案を提案する資格はない。

 4月28日には衆院3選挙区で補欠選挙が投票される。その結果次第で政治の潮目は大きく変わる。岸田政権の維持が困難になることも予想される。農民連は破綻した「改定案」の内容を国民に徹底的に暴露し、国会での野党の奮闘とも連帯して「改定案」を廃案に追い込む決意である。

 国会請願署名を大きく積み上げ、一致するすべての団体や国民と力を合わせてたたかう決意である。

4・17国会行動に寄せられたメッセージ

「改定案は撤回せよ」と声をあげる4・17行動参加者

 東京大学の鈴木宣弘教授「農業の憲法と言われる農業基本法を将来に禍根を残すことなくしっかり議論してほしい」
 日本共産党の志位和夫議長「徹底審議を通じて法案の問題点を明らかにし、自給率向上に農政の抜本的な転換をするときです」
 主婦連合会の河村真紀子会長「輸入に過度に依存し、効率を優先してきたこれまでの農政をおおいに反省し、国内生産の拡大を目指すべきです」
 全国生協労働組合の柳恵美子委員長「農業従事者はもちろんのこと、幅広く市民と意見交換する場をもって基本法の改正にとりくむべきです」
 山田正彦・元農水相「農地、水、種子は農業の根幹。『種子の自給』を条文の中に入れるべきだと考えています」
 バイオダイバーシティ・インフォメーション・ボックスの原野好正代表理事「私たちと子孫の明るい未来づくりに役立つ法案へと修正されることを望みます」
 OKシードプロジェクトの印鑰智哉事務局長「私たちは私たちの食を決定する権利を持っています」