アイコン 新聞「農民」

旬の味(2024年05月27日 第1602号)

 半端者ながら農業の世界に身を置くものとして、最近、私は強い憤りを感じている。世の中はインフレを許容し、給与所得向上に向けて動き出しているにもかかわらず、農産物への価格転嫁が驚くほど遅いことについてである▼適正な価格形成という言葉が出てから、どれだけ時間をかけて議論をしているのか。その間にも農家は、ただでさえ少ない身銭を切ってその日をしのいでいるような状態が続いている▼というのも、あまりに今日まで農産物の価格決定権が農家から奪われすぎていたことに起因しているのではないだろうか。分業化が進み、生産、卸、販売の間に膨大な経費が発生し、その全てに対して適正な労賃を払おうとすると、消費者の元に届く頃には驚くような価格になる▼しかし、それが今の日本の食料生産の真の姿であり、その不都合な真実を隠すために農業従事者が犠牲になることがあってはならない。もしこの状況を容認し続けるようなら、近いうちに日本の食が崩壊することは間違いない。(T)