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地方自治法改悪法案 地方自治を破壊する危険な法案(2024年06月03日 第1603号)

自治の本旨を侵害し国が自治体に指示できるように

自治労連中央執行委員 内田みどりさんに聞く

 国会で審議中の地方自治法改正案は国と自治体の関係を変え、地方自治を破壊してしまいかねない危険な法案です。改正案の問題点を日本自治体労働組合総連合(自治労連)中央執行委員の内田みどりさんに伺いました。

地方自治定めた憲法の92条を…

 地方自治を定めた憲法92条には「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める」とあります。地方自治の本旨とは団体自治(国から独立した団体が、その事務を自ら処理する)と住民自治(住民が自己の意思に基づき住民の責任で行政需要を充足させる)です。
 法的拘束力を持つ国の指示は、現行法では法定受託事務の違反発生時に是正のために出されるだけで例外的な措置です。

 今回の改悪では感染症の拡大や大規模災害、その他の「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」と「発生するおそれ」がある場合、各大臣が「特に必要」と判断すれば閣議決定により、地方自治体に対し指示を出すことができるようなります。

国会前行動でも反対をアピール

自治の力を育てる運動を

 政府は指示権拡大の理由を、2020年のダイヤモンド・プリンセス号対応におけるコロナ感染症患者の移送について、個別法(感染症法)上想定しないもとで国が役割を果たしたとしています。しかし実際の患者の移送にあたっては、厚生労働省の要請に基づいて、地方自治体が厚労省や関係機関とともに搬送先の医療機関の調整に奔走したのであり、この事例から国の指示が必要であったという根拠を導くことはできません。
 また、国の指示は感染症の拡大や大規模災害、“その他”の事態に出せることになっていますが、武力紛争という事態での発動が想定されます。緊急事態条項を先取りし、日本国憲法を骨抜きにするものです。

現場を無視した指示になる恐れ 

 不正確な立法事実に基づいて国の指示権拡大を規定し、団体自治を侵害し、果ては日本の平和主義をも破壊する本法案は、撤回されるべきです。
 食料供給困難事態対策法案に絡んでも国からの指示で生産計画の変更などが自治体に指示されることも考えられるのではないでしょうか。また災害対応でも、現場を無視した指示がされる恐れがあります。
 そもそも災害や感染症対策で必要なのは、国の指示ではありません。対応に必要な人員と予算の確保、体制の拡充です。それができれば自治体は十分にその役割を発揮できます。緊急事態の時ほど分権を進め自治体が対処しやすいようにすべきです。
 住民の運動で住民自治と団体自治の力を育てていくことが求められます。