全国食健連がシンポジウム 農基法改定強行に怒りの声(2024年06月10日 第1604号)
自給率向上で食と農の再生を
新たなたたかいが始まる

報告する(右から)長谷川、福田、木村の各氏
参議院本会議で改定食料・農業・農村基本法が強行採決され成立した5月29日、全国食健連は国会議員会館内でシンポジウム「食料・農業・農村基本法『改定』が生産者と消費者に与える影響は?」を開催し、会場とオンライン合わせて約100人が参加しました。
食健連代表幹事の小畑雅子さん(全労連議長)は主催者あいさつの冒頭に強行採決への抗議を表明し、自給率向上軽視、輸入依存拡大、拙速な審議を批判。「国民の食の安全確保に責任を持つべき政府のやることではない」と断罪しました。
続いて農民連の長谷川敏郎会長が農基法改定の問題点を解明し、東都生協総合企画室の福田宏俊室長補佐と主婦連合会前事務局長の木村たま代さんから、生協6団体や主婦連が、改定に当たって食料自給率向上などを求める要請を農水大臣に行ったことが報告されました。
長谷川会長からは農民連の抗議声明(2面)が紹介されました。
その後、報告者と参加者とが意見交換しました。
地域を基礎に歴史的変革を
農民連会長 長谷川敏郎
「食料・農業・農村基本法」改定は5月29日、与党と日本維新の会の賛成で可決・成立しました。しかし私たちは、明日からに生きる歴史的たたかいを展開し、市民と野党の共同のたたかいで政府与党を最後まで追いつめました。
自給率向上を政府の法的義務とすることを求める署名運動は6次の署名提出行動で10万人までもう少しまで迫り、紹介議員は30人を超えました。3月のFFPJ(家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン)院内集会、6生協院内集会、食健連の基本法改定案学習会など草の根学習会も広がりました。
この背景には、昨年6月に農民連が「新農業基本法への提言」を発表し、パンフを普及してきたことがあります。
基本法改定案の学習会では、食料自給率の目標が「向上」をめざすものでも「指針」でもなく、一指標にすぎないことを明らかにしました。
国会論戦のなかで、坂本農水大臣は「自給率が確実に上がると言い切ることは困難」と言い切り、食料の安定供給は、国内の増産ではなく、「安定的輸入」の促進だと述べました。
改定案には新規就農者の支援もなく、家族農業や兼業農家は「それ以外の多様な担い手」と差別的扱いになっていました。鈴木副大臣は、基幹的農業従事者が30万人まで減ることを前提に、「農業ロボットやスマート農業、規模拡大で対応し、それでも補えないなら外国人労働者を」と発言しました。
コロナ危機・ウクライナ紛争が起き、食料安全保障に関心が高まっても、政府は、現行法に国民のたたかいで押し込んだ「食料自給率目標」を目の敵にしています。
危機を招いた輸入拡大と大企業のための食料政策という「二つのゆがみ」を正し、自民党政治を終わらせる国民的大運動を呼びかけます。
地域・自治体を基礎にした食と農の歴史的変革の時です。公共調達の拡大としての学校給食の無償化と地場産・国産の利用、オーガニック給食の拡大を強めましょう。生産する消費者運動や作って食べて仲間が増える畑小組の取り組みも進めましょう。
直接支払い導入価格転嫁の実現
東都生協総合企画室室長補佐 福田宏俊さん
生協6団体は、各組織での協議や合同での学習会を通じて、消費者や生産者の声を集めて、消費者団体としての提言を3月19日にまとめました。
提言には次の4つ、(1)食料自給率目標明示、(2)農業・生産者保護のための適正な価格形成、(3)環境保全型農業について、(4)食品安全に関わる規制のポイントがあります。
過度の輸入依存解消のために自給率向上は必要であり、多面的機能の発揮のためにも農業は維持する必要があります。
そのためには価格転嫁の実現や政府の財政出動による支援が必要であり、直接支払制度の導入やコスト上昇による赤字の補てん、再生産可能な価格設定が必要です。
国民一人一人に安全な食料提供
主婦連合会前事務局長 木村たま代さん
改正案は食料自給率の向上の願いに反して、輸入依存を加速させ、国民の食への権利を一層脅かすものになっています。
私たちは、国内生産の拡大を基本とした持続可能な食料供給基盤の構築は待ったなしであり、これまでの農政を反省して国民一人ひとりに安全な食べ物が行き届くよう、2月2日に農水大臣に要請しました。
要請では大きな柱に食料自給率の向上をあげ、具体的な対策やスケジュールを示すことや平時からの国内生産基盤の強化と備蓄の充実など、海外依存からの脱却に向けた強い決意を示すこと等、6項目を求めています。
今後もみなさんと共同して取り組んでいきます。