食料自給率向上を放棄し、有事を想定した食料供給困難事態対策法強行に抗議する〈抗議談話〉
2024年6月14日 農民運動全国連合会会長・長谷川敏郎
一、6月13日に参議院農林水産委員会は、「食料・農業・農村基本法」関連法案を与党などの賛成多数で可決し、翌14日に本会議で可決、成立した。農民連は国民に食料を安定的に供給する政府の責任を投げ捨て、さらに有事を想定した食料供給困難事態対策法に強く抗議する。
二、「食料供給困難事態対策法」は、内閣総理大臣が不測の事態に、食料供給困難事態対策本部を設置し、食料供給困難事態の発生の「公示」「指示」を発する手続きが明記された。非常時に国民の権利を制約するトリガー(引き金)条項を定めたものである。
法令上、戦争する国づくりを目指す安保3文書にもとづく「武力攻撃事態等対策本部」と「食料供給困難事態対策本部」は同列のものであり、まさに「戦時立法」である。国民が最低限度必要とする食料の供給を保障するための法律ではないことは明白である。
三、「食料供給困難事態対策法」でイモや米への生産転換計画の作成を生産者に要請・指示し、計画を出さないと20万円の罰金を科し、警察が捜査し取り締まる。計画を出さない者の名前の公表は、さながら戦前の「非国民」攻撃の再現であり、さらに計画通り生産できなくても罰金を科し、離農者も予備役で動員する監視・恐怖政治である。不測時の法律による作付命令は私権の制限として憲法違反であり、我々農民はこの悪法を断固拒否する。
四、農民連は、この悪法を発動させないため、平和外交をすすめ、国内増産と食料自給率向上、食と農の再生に取り組む政治への転換を求めて全力でたたかう。