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本の紹介/『大阪の農と食を支える女性たち』(大阪農業振興協会ブックレットNo.4) 自分らしく生き、農業を愛する女性たちの記録

 「大阪では医師と農家どちらの人口が多いでしょうか?」という冒頭のクイズに一瞬返答をためらってしまいました。「医師よりも農家が多いのが当たり前」を覆すのが大都市の大阪です。府内の基幹的農業従事者は8326人(2020年)、そのうち女性農業者は2762人(60歳以下は500人)。目を凝らさなければ見つけることもできない女性農業者は、どのように地域に根を下ろし、農と食に向き合っているのか。
 本書は、都市農業の役割に誇りを持ち、職業としての農を次世代へつなげたい女性農業者の思いの実録です。これまでも女性農業者のがんばりは、さまざま取り上げられていますが、等身大の彼女らの生の言葉をまっすぐ受け止め、まとめてあるのが特徴です。
 紹介されている女性農業者には非農家出身も多く、農業に魅力を感じ職業として選択したにも関わらず、農業をやるなら「農家の嫁になればできるんじゃない」という声が投げかけられる。「嫁になりたいのではなく、農業をしたいのだ」。差別もあり、苦労や失敗もあるけれど、消費者と近い立地を生かしながら農の魅力を日々発信し続ける女性たちの農業への愛が満ちあふれています。
 新聞「農民」でも紹介されたイチゴ農家や麹(こうじ)加工など、環境や食の安全に配慮している実践も参考になります。
 (農民連事務局長 藤原麻子)

 著者 副島久実(摂南大学農学部食農ビジネス学科)・大坊幸(農民連大阪産直センター)
 発行所 (一財)大阪農業振興協会
 定価 900円+税
 注文・問い合わせ (一財)大阪農業振興協会 電話06(6965)3900、Fax06(6965)2901