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改定反対で広がった市民・生協の輪 最初のきっかけになった酪農・畜産危機緊急集会 東都生活協同組合企画室長補佐 福田宏俊さん

 全国食健連が5月26日に開いたシンポジウムでパネリストを務めた東都生活協同組合総合企画室室長補佐の福田宏俊さんは、6生協による「食料・農業・農村基本法改正」 に対する提言について報告しました。福田さんの報告の要旨に福田さんに補足していただいたものを紹介します。

 近年、食料・農業の状況が大きく変化している中、「食料・農業・農村基本法」の改正は、国内の農業を守り、食料自給率を向上させる重要な機会であると捉えています。全国で活動する生活協同組合6団体は、各組織での協議や合同での学習会を通じて、消費者である組合員や生産者の声を集めてきました。
 私たちの意見が、持続可能な農業と安全な食料供給の実現に向けた一助となることを願い、これから10年先の食料・農業・農村のあり方について、消費者団体としての提言をまとめました。
 その最初のきっかけとなったのが、昨年2月に農民連と全国食健連などが開催した酪農・畜産危機の緊急集会でした。いくつかの生協の代表がこの集会に参加し、発言しました。参加した生協は共通の問題意識を持っていましたが、それぞれが独自にアクションを起こしていました。ちょうどその時期に食料・農業・農村基本法の改定が行われるタイミングであり、各生協の取り組みを超えて連携する話が持ち上がりました。そして、各生協が持つ知識や経験を共有し、共通の目標に向かって協力することになりました。
 各生協では、それぞれの生産者とつながり、さまざまな取り組みを進めています。地方の生産者をつなげ、その声を大きくしたいという思いもありました。このような背景から、食料自給率を上げる政策への転換を目指し、昨年9月に都内で6生協合同の学習会を開催しました。この学習会では、農林水産省や有識者、生産者から報告をいただき、消費者である組合員とともに農業の現状や課題を共有しました。
 こうして今年3月に、6つの生協が協力して「提言」をまとめ、その代表者が農林水産省に直接提言書を手渡し、提言の意義と重要性を認識していただきました。また、その日に国会議員会館で意見交換会を開催しました。この会には、農民連の藤原麻子事務局長も参加し、貴重な発言とエールをいただきました。

直接支払いの重要性を強調

 提言の主なポイントは、(1)食料自給率目標の明示と実現のための対策、(2)国内農業と生産者保護のための適正な価格形成、(3)環境保全型農業、みどりの食料システム戦略について、(4)消費者の立場に立った食品安全などに関わる規制と表示、食料の安全確保の強化について、です。
 提言の中では生産者への直接支払いの重要性を強調し、農業の持続可能性を確保するために、農畜産業の安定的な発展と生産者の所得確保のための政策や制度の改善を求めています。昨年の酪農・畜産危機緊急集会では、生産者が飼料や資材の高騰に苦しんでおり、「これ以上続けられない」「これでは廃業に追い込まれる」という切実な声を多く聞きました。この声を受けて、農家の所得を補償し、直接支払いの必要性を痛感し、提言にも盛り込むこととしました。
 最後に、改正法案の成立後、9月以降の基本計画の策定に向けて、提言の4つの項目について私たちの要望を実現するための取り組みの準備を現在進めています。これにより、提言内容を具体的な政策に反映させ、食料自給率の向上と持続可能な農業・農村の発展を目指していきます。