たたかいはこれから 力合わせ政権交代を 改定農基法に4野党が怒り
改定「食料・農業・農村基本法」が成立しました。法案審議のなかで、野党は、食料自給率向上、担い手対策などを求めて論戦してきました。改定後、私たちは何をすべきかについて、野党4党の国会議員に聞きました。
農家の期待に沿わない自民党農政の延長線上
立憲民主党・参院農林水産委員会筆頭理事 横沢高徳参院議員

「食料・農業・農村基本法」が制定されてから四半世紀、生産基盤の弱体化や農業従事者と農地の減少が進んできました。にもかかわらず、同法改定案の審議中に、坂本農水大臣は、「生産基盤は弱体化していない」と答弁し、そこに農村現場との認識のずれを大いに感じました。
人や農地の減少を目の当たりにしている生産現場のみなさんは当初、基本法の改正に大きく期待していたと思いますが、これまでの農政の検証は何一つ行われず、改定法の中身はこれまでの自民党農政の延長線上で、みなさんの期待に沿わない内容でした。
今求められているのは、食料自給率の向上であり、国内生産を増やすことにあります。その原点に立ち返って、改定法をみると、自給率向上は条文化されず、基本理念にも入っていません。国内生産の供給能力の維
持という文言にとどまり、向上は入っていません。
それに加えて、今の農政の問題は、再生産可能な所得が保障されていないことです。所得の確保も条文上は明記されず、「合理的な価格形成」にとどまりました。その解決策は直接支払いだと考えます。
これまでの自民党農政は、大規模・集約化のもとに、生産性の向上が進められ、小規模・家族経営農家は置き去りにされ、新自由主義的農政で、弱肉強食、競争が推し進められました。大規模に集約化しただけでは、農家の所得は確保できません。だから直接支払いが必要なのです。
金を出せば食料が手に入る時代は終わりました。消費者のみなさんも地域でとれた農産物に今まで以上に目を向けてほしいと思います。
これまでの歴史を振り返ると、農村から地域コミュニティーが生まれ、食文化、伝統芸能が生まれ、社会が形成されてきたのです。農林水産業、第一次産業は国づくりの基礎であり、そこを軸に日本を立て直していきたいです。
農業の未来に希望をもち、がんばってきた農家が報われるためにも、志を同じくする人たちと力を合わせて、政権交代を実現するために全力を尽くします。
自給率向上をしっかり位置付けるよう主張
国民民主党・党参議院議員会長 舟山康江参院議員

1999年の「食料・農業・農村基本法」制定時には、8年かけて議論し、法案を作成しましたが、今回はわずか1年半という短さでした。農業競争力強化、強い農業などアベノミクス農政への反省もなく、生産基盤が弱体化しているもとで、わずか1年半の議論では新たな方向性は生まれないと思います。
政府は、食料事情が厳しいと認識しているにもかかわらず、食料自給率の向上や供給力の維持・向上をめざすという意気込みが法案審議のなかで感じられないのも残念でした。不測の事態が起きかねない状況にあるなかで、平時の食料自給をおろそかにしておいて、不測時には生産の指示・要請に従わなければ罰則を科すというのはおかしな話です。
これまで大規模化・集約化、選別政策で農家をふるいにかけてきた結果への検証も必要です。小規模でも、高齢でも多様な農業経営が成り立つような政策が必要です。農民連の長谷川敏郎会長が参考人質疑で提案したような適正規模の農業が成り立つ農政が理想です。

3月13日に行われた自給率向上を求める署名の提出集会
離農が進み、耕作放棄地が増えて、生産基盤が弱体化してきたことの大きな原因は農家の所得の確保が困難だったことであり、そのための方策が求められます。
基本法改定後の農政は、再生産可能な所得の確保を求めて理解を広げていくことが必要です。私たちは生産者への直接支払いが大事だと考えます。国の意思として農業・農村を国民全体で支え、食料の安全保障の観点から消費者のためにもなることを訴えていきたいと思います。
参議院の審議のなかでも、食料自給率については、多くの議員から「いくつかある指標の一つに格下げしたのではないか」との懸念が相次ぎましたが、国内の農業生産及び食料消費に関する「指針」である位置付けは変わらない、と明確に答弁しました。引き続き農政の指針としての自給率の重要性を訴えていきます。
農業予算を増額するよう働きかけもしていきます。そして何よりも、農政を変える一番の近道は政権を変えることです。
自民党農政を許さず力合わせ新政権新農政を
日本共産党・党農林・漁民部長 紙 智子参院議員

基本法の審議を振り返ってみると、農村が直面している歴史的な危機を打開するどころか、さらに悪化させ、亡国の道に向かわざるをえない改定だったと思います。
最大の問題は、食料自給率向上の目標を投げ捨て、食料の海外依存を継続し、歯止めない輸入自由化、大規模化一辺倒の農政にあります。
いま農村の現場では、離農が相次ぎ、担い手も減少しているにもかかわらず、小規模・家族経営をはじめとした多様な経営体を支援するのでなく、規模拡大や集約化、スマート農業の方向で乗り切ろうとしています。
今回の審議は、食料・農業・農村基本法制定時の1999年に比べて不十分だったと言わざるをえません。当時は、WTO(世界貿易機関)体制が発足後で、市場原理、輸入自由化、関税引き下げ、価格支持をとらない政策を前提にした議論が行われ、法案に反対したのは共産党だけでした。しかし今回は、農水委員会では立憲民主党、国民民主党も反対したのは、当時との大きな違いです。
そこには農民連のみなさんが自給率向上を求める署名を集め、6次にわたって国会に提出し、国会議員に粘り強く働きかけるなどの運動の広がりがありました。みなさんの運動の成果に大いに確信をもってほしいと思います。数の力で改定されましたが、これから基本法を具体化する基本計画の審議が始まり、たたかいはまだまだ続きます。
日本共産党は、食と農の再生プランを発表し、「食料自給率の向上を国政の柱に据え、農政の基本方向の転換を」と提言しています。
いま各地で食と農についてのシンポジウムやつどいが開かれています。生産者と消費者が手を携えて、学校給食の無償化、地産地消、オーガニック化などの運動が広がっています。長谷川会長が参考人質疑で提案したアグロエコロジーは国会のなかでもその理解が進みつつあります。
農業者の声に耳を傾けない自民党には、これ以上農政を任せるわけにはいきません。力を合わせて新しい政権、農政をつくりましょう。
声をあげて担い手・農家が希望を持てる農政を
社民党・党副党首 大椿ゆうこ参院議員

基本法改定案が国会で審議入りしたとき、政府の中身のない答弁を聞いて、「こんなものは親に聞かせられない」と思いました。
改定基本法の問題点は、食料自給率向上を明確に位置付けていないということもありますが、私が強調したいのは、担い手不足をどうするのかのビジョンがまったくみえないことにあります。
私は、岡山県高梁(たかはし)市の中山間地で生まれ育ちました。その頃からすでに過疎化が進んでいました。両親は兼業で農業を営み、米や野菜も自分たちが食べる分は、ほぼすべて自分たちでつくっていました。親は子どもたちに農業を継がせようという発想はなく、周りの家も高校を卒業したら、街を出るのが当たり前でした。年に何回か実家に帰りますが、農地が荒れ、耕作放棄地が増えているのを目の当たりにすると罪悪感にさいなまれます。
「人口が減っているから農家も減少している」と政府は言いますが、担い手が減少しているのは、それで食べていけないからです。そこは税金で支えるべきなのです。農業は国民の食を支える大事な仕事です。
今の若者は農業に関心がないとは思いません。むしろ、農業に関心をもつ若者は少なくないと思います。就農したいと思う若者がいるにもかかわらず、担い手を求める地域にうまくつなげられず、支えられていないのが問題です。今の農政は大規模化・法人化に力を入れていますが、いまやるべきなのは、長谷川会長が参考人質疑で述べたように、これまでの農業を支えている小規模・家族農業を支援することではないでしょうか。
改定案が参議院本会議で可決されたとき、賛成に起立した自民党議員に向かって、「あなたたちは誰のおかげで当選できたと思っているのか」と思わず叫んでしまいました。農家の思いを裏切った与党の姿をみて、本気で政権を代えないといけないと思いました。
食と農は命に直結している問題です。どんな人にも共感してもらえるテーマです。ともに声をあげ続けて、農業で暮らしていける農政に変えていきましょう。