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農家から物作りの自由奪うのは絶対許せない 有事食料法の廃案求め農水省に要請

2週間足らずで2万人超のネット署名

高知・香美(かみ)市 ゆず専業農家
三戸毅(つよし) さん

仁比聡平参院議員(日本共産党、右)に署名を手渡す三戸さん

 食料供給困難事態対策法案(有事食料法案)の国会審議が山場を迎えている6月12日、高知県香美市のゆず(物部ゆず)専業農家、三戸毅さん(54)が上京し、三戸さんが呼びかけた廃案を求める2万1000人余のネット署名を農水大臣あてに提出しました。
 また同様の趣旨の参議院議長あての請願書を提出し、高知県選出国会議員らに要請を行いました。
 法案は、「食料・農業・農村基本法改定法」の関連法で、食料の輸入が減少して国民生活に影響が及ぶ事態には政府が農家に増産や作物転換を要請し、さらに困難事態には罰則を伴う指示を発するというもの。
 署名の呼びかけ文は、「農家から自由を奪い国家が管理するもの」「憲法違反」と指摘し、廃案を要求しています。
 三戸さんは5月28日に署名をインターネットで呼びかけ、「全国から2週間足らずで2万人を超えた。名もない一農家の呼びかけにこんなに賛同が寄せられたのは、法案に対する国民世論の大きさが示されている」と言います。この声を国会や農水省に届けなければと一念発起しました。
 三戸さんは大阪でのサラリーマン生活にピリオドを打ち、香美市で就農して5年目。周りのみなさんからの援助で物部ゆずを生産しています。「自由を求めて就農した。何を作ってどう売るかは農家の自由。平時の増産を支援せず、いざという時に農家の自由を奪うのは絶対に許せない」と声を上げます。行動に農民連の笹渡義夫副会長が同行しました。

我々の要求に真正面から向き合う国会議員を多く

国会議員回った三戸さん

ゆず畑での三戸さん

 政治にナイーブ(うぶ)な私を取り巻く市民は、市井における日常会話で気を付けていることがある。それは「政治マター」に触れないことだ。殊に党派性を露にしてしまう態度は禁忌だ。
 政治は市民生活のあらゆる場面に否応なく関連してくることだから、それは日常会話で「好きな食べ物」の話題を避けながら世間話をやり抜くことと同じ程度に難しいことのはずだ。にもかかわらず、「我々」はその作法の下で会話する。
 その「我々」の一人である私が今般、陳情、請願のために国会を訪れた。日本は民主主義社会なので当然なのだが改めて「ここは市民に開かれている」と思った。
 「我々」をとりまく問題について、その合理的な問題解決プロセスを運用するために「我々」自身が利益団体となり議員を巻き込み、政策パッケージを策定、実現する。それを継続することで農村の根深い諸問題さえ解決することは難しくないことを予感した。
 今は「我々」の側から政治を切り離しているだけの話なのだ。そして今日も私の傍らにたたずむ米農家は「米が安くて農機具さえ維持できない」。新規就農者としての私を導く師匠も「就農支援制度は形骸化し指導者も研修生も置いてきぼり」とこぼす。
 日本の農政は中山間における営農行為をなりわいのためではなく先祖からの土地を荒廃させないためだけのものに変えてきた。そうしたのは圧倒的な数的勢力を誇る政権党とそれを支える経済界だ。でも、彼らは彼らの問題解決プロセスを政治をツールとしながら愚直にこなしてきただけのことなのだ。
 しかし、それもそう長くは続かないのだと思う。何せ私のような者でさえ気がついたのだ。「我々」は「食べたい物」の話ばかりしている場合ではないのだと。我々が我々に真正面に向き合ってくれる議員諸氏を国会に送り込み、我々自身の問題解決に巻き込む時は近い。その時こそ農民連には、目覚めた我々の灯台となり、手足となり、誇りある農業社会の実現のために手を貸してもらいたい。

我々の灯台、手足としての農民連に期待

 今回、農民連の組織と活動について知ることになり、その素晴らしい取り組みにも強いあこがれを感じるところである。
 いつか私も仲間に入れていただき、農業と食料の未来のために働く日が来ることを希望している。