米づくり農家を悩ませるカメムシ ニームオイルを使ってカメムシから米を守る(2024年07月29日 第1611号)
有機米農家 佐藤恒夫さん(76)=新潟県長岡市=
「大事なのは散布の タイミングと濃度です」

「安全・食味・収量」を追求して米づくりを続けてきた佐藤さん
ここ数年の酷暑は農産物生産に多大な影響を及ぼしています。特に昨年は高温とカメムシの被害が大きく、米づくりに限らず、野菜・果樹など多くの農家を苦しめています。
米どころ、新潟県長岡市で有機米づくりをしている佐藤恒夫さん(76)の実践を紹介します。
佐藤さんがカメムシ防除に使用しているのは、「ニームオイル」という忌避剤(きひざい)です。有害昆虫などが忌避剤の匂いを嫌がって近寄らないようにする効果があります。ニームオイルはインドの栴檀(せんだん)という薬木の果実から抽出された天然由来のオイルで、佐藤さんは15年ほど前からカメムシ防除にこのニームオイルを使ってきました。
イネの出穂時期見極める

アカヒゲホソミドリカスミカメ(新潟県斑点米被害対策パンフレットから
「大事なのは散布のタイミングと濃度です」。佐藤さんはカメムシがイネに飛んでくる理由は「出穂期の花粉の匂いに引き寄せられるから」と説明します。
「私は出穂5日前に1度目の散布を行います。希釈濃度は、田んぼを観察してカメムシが目視できるようなら500倍、いないようなら1000倍でも良いです。散布後の効果継続は、だいたい10~14日間なので、その頃に2回目の散布を同じ濃度で行います」
佐藤さんは大型の動力散布機を用い、田んぼの左右の畔からまいています。背負い式の高圧散布機だと田んぼのまわりからまく、「額ぶち散布」で対応できると話します。
「カメムシが飛んでくるときに防除ができていないと効果は出ない」。これは「スタークル」に代表されるネオニコチノイド系農薬を散布する場合でも同じだと佐藤さんは強調します。
田んぼ周辺の雑草対策は
暖冬の影響で越冬するカメムシが増え、今年の中越管内では、昨年の4倍のカメムシ発生の警告が出されています。田んぼの周囲に生える1年生イネ科雑草(スズメノカタビラやメヒシバなど)やイタリアンライングラスなどは、カメムシの格好の繁殖源になるため、定期的な除草作業が必要だとされています。また、あえて周囲の雑草を「高刈り(地表から5~10センチメートル残して刈る)」することで、カメムシの住みかをつくらせ、田んぼに飛んでこないようにするやり方もありますが、いずれにしても佐藤さんは「まわりの対策をがんばっても時期が来れば田んぼの中にカメムシは入ってくると思っている」と話します。
茎がとても太く丈夫なイネ育つ

ふるさとネットワーク「ニームZ」チラシ
中山間地域や、平地でも川の土手沿いなどの田んぼは、カメムシの住みかが周囲にたくさんあります。イネそのものを守る有機的防除として、ニームオイルを使用してきたこの15年間、「カメムシ被害は出ていない。色彩選別機を使わず、お客さんからのクレームもない」と言います。
佐藤さんの田んぼに行くと、1本1本の茎がとても太く、しっかりと開張し、根元まで光が入る元気で丈夫なイネが育っていました。規模はかつての3分の1、1・2ヘクタールに抑えていますが、今も10アールあたり600キログラムの収量を誇ります。
「もう少ししたらクモが出てきて、田んぼがクモの巣だらけになるよ。農薬は、そういう天敵も生きられない環境にしてしまう。昔はカメムシ被害なんてなかった。それはなぜかを考えないといけない」
佐藤さんが使っているニームオイル「ミラクルニームNEEM―Z」は農民連ふるさとネットワークで購入できます。
販売価格は1本(1リットル)9200円+送料、1ケース(1リットル×12本入)11万400円です。いずれも税抜き価格。
佐藤さんの田んぼ1・2ヘクタールの場合、500倍に希釈して使うと、60アールあたり「ニームZ」を500ミリリットル使うので、ちょうど1リットルで田んぼ全体に散布できます。