地域の事業者と連帯して農業の再生と発展をめざす(2024年07月29日 第1611号)
和歌山県紀ノ川農協 地域資源を利用し 多彩な担い手をふやす 地域の課題解決を図る 消費者も農作業に参加
都会人がみればきれいな風景も

紀ノ川農縁隊のとうもろこし定植作業
和歌山県の紀ノ川農協“ふうの丘直売所”(紀の川市)の中のカフェ・ムリーノの窓から見える風景は、竹林や道路法面の葛(クズ)、外来種のアサガオ、遠くには雑木林になった耕作放棄地など、農家にとっては不快な景色です。ところが都市から来られる人にはきれいな風景に見えるそうです。
和歌山県の再生可能な遊休農地は4・9%、再生困難な荒廃農地が7・2%で12%の農地が耕作されていません。基幹的農業従事者は、65歳以上が63・9%を占め、34歳以下はわずか2・5%しかいません。このままでは急激に農業、農村が衰退していきます。また、和歌山県の空き家率は、残念ながら21・2%でワースト1になりました。(2023年調査)
遊休農地活用し担い手をつくる

今年の春から取り組み始めたとうもろこし収穫体験
紀ノ川農協は農業や農村に関わる人を増やし、地域の課題の解決と組合事業の維持・発展をめざしています。足りないのは地域資源を資源と見て利用する人、つまり多様な担い手です。
昨年の秋、ふうの丘直売所で新規事業に向けてのアンケートを行いました。回答者139人のうち75人が大阪で、約6割の80人が体験農園や貸し農園を利用したいと回答しました。
6月の総代会では3つの事業を柱にした「株式会社紀の川流域カンパニー」を設立することを確認しました。
(1)地域の遊休農地を活用し、農業体験を通じて関係人口を創出する体験農園事業
(2)滞留・滞在を創出するための空き家を活用した宿泊・飲食事業
(3)地域の新たな担い手を継続的に創出する担い手育成事業
紀の川市と街づくり「紀の川コラボレーションプロジェクト」に取り組んでいる株式会社MISO SOUP(注1)や地域事業者とともに新会社を設立します。
紀ノ川農縁隊が定植・収穫体験

定植後の集合写真
とうもろこし収穫体験はこの春から取り組み、は種や定植などの準備作業は、地元生協を通じて募集した67家族155人(15歳未満55人)のボランティア「紀ノ川農縁隊」が準備作業と収穫体験に参加しました。
体験農園の拠点となる古民家は、地元生協が商品の引き渡しステーションとして借り受けてトイレの改修工事を行い、隣接する倉庫を紀ノ川農協が借り受けました。
地主さんや自治会総会で今回の取り組みを説明し、地域の方の理解を得ながら遊休農地を活用した約60アールの体験農園を確保し、畝たてなどの作業は、紀ノ川農協の役職員が忙しいなか協働して行い、収穫体験のガイドも行いました。
7月からのとうもろこし収穫体験には、大阪の生協企画で、バス28台、650人と地元生協・紀ノ川農縁隊の130人が参加しました。
バスの中では、紀ノ川農協が作成したビデオ(注2)を見ていただき、現地では収穫の諸注意と今後の企画参加の呼びかけとアンケートのお願いをしました。
料理や宿泊など貸し農園で企画
アンケートの回答者は、78人(10%)で、収穫体験の5段階評価は4~5が90%、この後のブロッコリーや玉ねぎの体験参加希望は80%以上、紀ノ川農縁隊への参加希望は50%もありました。
貸し農園に対する企画要望では、「収穫した農作物で料理ができる(36%)」「宿泊込みで収穫ができる(24%)」などサービスの希望者が多数でした。新規事業発展の可能性が見えてきました。
新規就農者が経営施設の準備
紀ノ川農協直営で新規就農者がキウイやトマト、キュウリの模擬経営を行う施設の準備を進めています。トレーニングファーム施設や体験農園のオペレーターを紀ノ川農協職員として募集しています。
(和歌山・紀ノ川農協組合長 宇田篤弘)
(注1) https://misosoup.co.jp/
(注2) https://youtu.be/FUPMh9Lm18E
紀の川丸ごと体験農園プロジェクト紹介動画
