茨城 農と食を考えるとりで未来プロジェクト結成
農家と市民・消費者がひとつになって
地域でともに考え行動しよう

あいさつする根本代表
「この地域で食料と農業について考え、語りましょう!」――。消費者、市民や農家でつくる「食と農を考えるとりで未来プロジェクト」の結成式と交流イベントが6月29日、茨城県取手市内で開かれ、市の職員や農協職員も参加するなど会場いっぱいの85人が参加しました。
2年3カ月かけ話し合って準備

岡崎事務局次長
主催者あいさつを未来プロジェクトの根本和彦代表が行い、「世界的には最悪の食料危機といわれるなかで、命を支える食、その食を支える農業がこのままでは先細りしてしまうという危機感をもち、農家と市民、消費者が、食と農とこの地域をどうしていくかを2年3カ月かけて話し合い、準備しながら今日スタートすることになった。これからもみんなで真剣に考え、行動に移していきたい」と述べました。
第1部は農民連の岡崎衆史事務局次長による基調講演「食料と農業について一緒に考えよう~食と農は危機にある社会を永続可能にするカギ」が行われました。気候変動、紛争、人口増加のもとでの低い食料自給率、農業従事者と農地面積の減少など、日本の食と農の現状を解説しました。
問題の解決策として、自由貿易協定の見直し、農業予算の増額、農家の所得の補償などの対策を示し、公共調達・学校給食の取り組みや各地域でさまざまな行動を起こしつつ、食と農について話し合う機会を増やし、自給・循環づくりの取り組みにチャレンジするなど、「やれることから始めよう」と呼びかけました。
地域活性化のヒントいっぱい
第2部は参加者によるパネルディスカッションが行われました。
4人のパネリストによる報告(要旨)
取手市農業委員会会長の倉持光男さん

倉持光男さん
法改正により農地取得要件の下限が撤廃され、意欲をもって農業に参入できるようにした結果、3年間で8人の就農者を迎えました。多様な担い手を受け入れることによって、特色ある農業が展開できます。使われていないビニールハウスを補修してメロンを栽培し、取手初のメロンを販売したいという夢を抱いています。
聖徳女子高校のみなさん

聖徳女子高校のみなさん
遊休農地の解消、地域活性化、地産地消をテーマに、ヒマワリを種から育てる「ひまわりプロジェクト」に取り組み、ヒマワリのような笑顔を咲かせるという願いを込めて、ヒマワリ油から化粧品「ひまわリップ」を開発し、コスメアワードで審査員賞を受賞しました。取手市のふるさと納税返礼品にもなっています。
今年のテーマは「食べ物」。「ジャンドゥーヤ」と呼ばれる、ナッツ類を、ペースト状にしたチョコレートと混ぜ合わせたミルクチョコレートを開発し、洋菓子屋さんとのコラボも実現しました。
新日本婦人の会取手支部の森恵美子さん

森恵美子さん
茨城県内では44市町村中20市町村で給食の無償化を実施するなど広がっています。これに対して取手市は21年度から200円値上げして県下一高い給食費になっています。23年9月議会に1532人分の署名を携え、無償化と地元産食材の拡充を求める請願書を提出し、趣旨採択となりました。
一方で「物価高騰に左右されない給食の提供を求める決議」が全会一致で採択されました。今年4月からは給食費の負担軽減・無償化と地元産食材の拡充を新市長に求めて運動を引き続き継続していきます。学校給食の運動を農業の活性化にもつなげていきたい。
新規就農をめざす根本道太郎さん(43)

根本道太郎さん
現在はつくば市内の木工会社に勤務しています。小さい頃から家業の農業も手伝い、ものづくりは好きでした。趣味の自転車がきっかけで、体づくりには食べ物が重要だと気付き、食と農に強く関心を持ちました。食料問題については正直ピンとはきていませんが、資材高騰、物価高、高齢化など農業を取り巻く状況が大変だという危機感はあります。
農家の8割が農業だけでは生活できない実情を知り、今後就農するには農業以外の収入源も検討しつつ、大規模農家も小規模農家も共存できるような社会にしていきたい。
会への期待が大 32人が入会申請
4人の報告の後には質疑応答が行われ、子ども食堂を運営する人からは「自前では運営できず、農家から米や野菜を提供してもらい、消費者にも手伝ってもらいながらやっている。交流してつながることが大事。プロジェクトの一員として参加したい」と入会表明がありました。
食品仕入業界に24年勤務した人からは「コロナ禍で中国産輸入食材が入ってこなくなり、混乱した。食料安全保障は非常に重要だ。安い輸入農産物には問題があり、食は健康に直結する。国産のものを買うよう国民が食料に対する意識を変える必要がある」などの意見が出されました。
県南農民組合の渋谷俊昭組合長は「農家だけでなく個人、団体と連帯して地域活性化をめざすためにもみんなで知恵を出し合おう」と訴えました。
岡崎さんはまとめで「韓国の給食の運動は、明るい未来、希望ある地域を合言葉に楽しみながら行っている。楽しく、おもしろい活動を大事に、さらなる発展を」と今後の活動に期待を寄せました。
最後に根本代表が、プロジェクトへの多くの人の入会を呼びかけて閉会しました。
終了後、32人から入会の申し込みがありました。