アイコン 新聞「農民」

止めよう米つぶし政策、作ろう国産米 食糧部会が米の基本指針

このままでは、作れない、売れない、食べられない国産米

 7月30日、食料・農業・農村政策審議会食糧部会が開催され、「米の基本指針」が了承されました。


 過去最低の在庫、 米不足は明らか、 新米の取り合いは必至

 2024年3月の基本指針では177万トンとされていた6月末民間在庫が過去最低、前年比41万トン減の156万トンとなりました。
 米不足の結果、卸業者間取引などのスポット価格は現在、3万円近くになり、前年の2~1・8倍に高騰しています。
 23年産米は10月末で消えてなくなる水準で、今後の米販売で、新米の取り合いになることは必至です。
 また、全農(全国農業協同組合連合会)などと卸売業者による事前契約(8月の収穫前契約)が増加すれば、市中に出回る新米はさらに少なくなり、スポット価格は高騰する一方で、相対価格は相対的に抑えられ、大手米穀卸業者などの市場支配が、さらに強まる可能性があります。
 23年7月~24年6月の需要実績は、需要見通しの681万トンから21万トン増の702万トンとなりました。
 需要増について、インバウンド(外国人の訪日旅行)増とコロナ禍からの中外食の増加では説明できず、食品価格高騰の中で相対的に安価なお米の需要が増えたとしています。
 深刻な経済状況のもと、「経済的な食品」としての米が正当に評価され始めた側面があります。

 ひどすぎる 「数字合わせ」 の需要・在庫見通し

 しかし24年7月~25年6月の需要見通しは、今年の702万トンから29万トン減の673万トン。前年実績(691万トン)比でも18万トンも減少するとしています。
 これは1年で9万トンずつ消費減という過去のトレンド(傾向)に固執して、せっかく増えた米需要を帳消しにし、米販売現場のリアルな実態とかけ離れた数字合わせにすぎません。農水省は米消費増が嫌なのかと疑わざるをえません。
 価格高騰と米不足の中、新規の契約はお断りし、常連さんにも、量を減らしてもらったりして、新米時期を迎えつつあるお米屋さんに、米販売を「控えよ」と言っているようなものです。
 こんなデタラメな見通しにさすがに自信がないのか、農水省は8月にも食糧部会を開き、情報整理を行う予定です。
 しかし、年間需要分を満たす生産量になる可能性は低く、米不足の解消は難しいといわざるをえません。
 もしも、24年産米が不作になり、供給量がさらに不足する事態になれば、SBS(売買同時入札)輸入枠を10万トンから20万トンへと引き上げ、などということになりかねません。

 子ども食堂、 フードバンクなどへの緊急支援を

 農水省は、加工用向けに備蓄米を8月以降に1万トン販売するとしています。生産者が、安い加工用米を作らなくなり、MA(ミニマム・アクセス)輸入米でも間に合わないので、備蓄米を販売するというのです。
 現在の米不足は、加工・販売・支援の現場などで広く起きています。
 生活保護申請が25万件を超えてこの10年で最多となり、子ども食堂が全国で9千カ所を超え、正規雇用の人がフードバンクに並ばなければならないように国民生活の実態は深刻です。生活困窮世帯への直接支援拡充は緊急の政治課題です。
 ところが政府がやっていることは、子ども食堂にわずか127トンの備蓄米を供給するだけ。フードバンクは対象外です。

 「減産」から「増産」に転換し、 安心して食べ、 作り、売れる米政策を

 米農家は、生産費に届かない生産者米価、資材等高騰による物財費の高騰で時給10円の米作りを強いられ、離農・廃業が加速し、続けている農家も、いつやめるのかを考えることが当たり前になっています。
 しかも、現在まで起きている価格高騰と米不足は、21年産米価暴落の原因が過剰生産にあるとして、年間20万トン以上の減産を2年連続で押し付けられ、在庫を減らしてきた結果です。米不足と高騰は破綻した「米政策」にあります。
 日本人の主食であるお米の生産と需給・価格を安定させること、水田つぶしをやめ、水田の生産力、環境維持の力を最大限活用することは国の最小限の責任です。
 生産者への直接支払いとアメリカのSNAP(補助的栄養支援プログラム)のような消費者への食料支援を制度化し、作ることも、食べることにも安心できるような、政治と農政に転換させることが強く求められています。
 農民連は8月7日に「食料支援を求める緊急要請」を行います。