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令和の「畜産危機」で養豚農家が大幅に減少(2024年08月26日 第1614号)

個人要望書に取り組み 政府に直訴を

群馬農民連副会長 上原 正さん=安中市・下仁田ミート名誉会長=

期待の若手、下仁田ミート安中牧場長の横堀秀文さん

 農水省は7月9日、2024年2月1日現在の「畜産統計」を公表しました。豚飼養農家戸数は3130戸で前年より7・1%(240戸)減となりました。

 

来年の養豚農家3千戸切る恐れ

下仁田ミートの吾妻牧場の豚たち

 経営状況が最も危機的と言われた酪農(乳用牛)の飼養戸数は5・6%(700戸)減で、畜産の中では養豚が最大の減少率となりました。特に飼養戸数のトップ10に入る九州の鹿児島、宮崎、熊本の3県と沖縄の減少率は10%を超え、このままの傾向からすると来年はいよいよ3千戸を下回る可能性が高くなりました。
 農民連は、22年から「日本から酪農・畜産の灯を消すな!政府は直ちに対策を!」と呼びかけ、十数回に及ぶ農水省(農水大臣)交渉を行い、「緊急パッケージ」の支援策が実現しました。しかし支援は十分ではなく離農が増加しています。

 

配合飼料価格は1トン2・5万円

 昨年から配合飼料価格は値下げ傾向にありますが、配合飼料安定基金や国の緊急対策補てん金がなくなり、実質1トン当たり2・5万円前後の高止まり状態で、4年前の約1・5倍以上の価格となっており、危機的な状況に変わりはありません。
 6月に開催された日本養豚協会の通常総会で、自民党の森山裕総務会長が講演し、食料の価格形成を巡り、「適正な価格とは再生産可能な価格」であり、「生産を続けるためには、コストに合った価格で売れることが不可欠」と強調しました。次の通常総会に関連法案を提出する方針なので注視していきたいと思います。
 農家の救済措置どころか、農水省はとんでもないことを計画しています。7月18日、牛豚等疾病小委員会を開き、豚熱やアフリカ豚熱の防疫指針の見直しを議論しました。見直し案は農場に「第一義的責任」があり、発生した際の防疫措置について農場も機材や人手を提供する必要があるとし、農場だけでは迅速な対応が難しい場合に、県が担うことを明記しています。
 病気の発生は農家の責任ではなく、海外の病気を国内に持ち込ませた国の責任です。まだ、具体的な負担については明らかにされていませんが、防疫指針はパブリックコメントなどを経て、9月をめどに改正を行う予定です。各種団体とも協力しながら、反対の声をあげていきたいと思います。
 「酪農・畜産危機を打開する個人要望書第2弾」の運動が始まりました。一人ひとりの農家の声を集め、政府に「直訴」しましょう。