7月大雨 秋田、山形両県に甚大な被害 農民連本部が現地調査 被災地の会員や農家の声聞く 離農者出さないための支援を(2024年09月02日 第1615号)

浸水の状況を説明する猪股さん(左から2人目)と長谷川会長(左端)
7月24日に発生した大雨は秋田、山形の両県に大きな被害をもたらしています。最高で1時間の降水量が300ミリメートルを超え、大規模な河川のはんらんや水害をもたらしました。
農民連本部とふるさとネットワークは8月20~22日、長谷川敏郎会長を先頭に秋田、山形の両県の農業被害を現地調査しました。
農地や倉庫水没 大量の土砂流入
20、21の両日は秋田県の横手市や由利本荘市の被害を調査。県農民連の鈴木一事務局長や高橋肇副委員長、佐藤長右衛門顧問が同行しました。
由利本荘市では佐々木隆一市議会議員が案内をしてくれました。石沢地区の会員で稲作農家の猪股義すけ(本来はしめすへんに甫)さんは「70年ぶりの水害だった」と振り返ります。
石沢川は猪股さんの家の近くで川幅が狭くなっています。「大雨で増水し逆流を防ぐために本川の水門を閉じました。その結果、山からの水があふれ、田んぼや倉庫、農道が水没しました」と話します。石沢川と子吉川の合流点付近では堤防の決壊も起こり、田んぼに大量の土砂が流れ込みました。
また同市の旧西目町では鉄砲水による被害が多発しています。西目町の田高地区では増水した水と土砂で田んぼが削られ、ビニールハウスが押しつぶされていました。
佐々木市議は「河川の浚渫(しゅんせつ)や河川内の立ち木の伐採などが予算不足でできず、被害が拡大しています。上流域にはもっとひどい場所があり、道路が寸断されて入れません。市の被害は8日現在で190億円近いが、まだ全容は把握できていません」と語ります。
30年稼働して初めての被害
農業用施設にも大きな被害が出ています。JA秋田しんせいの由利カントリーエレベーターは7月25日の午後から翌朝まで水没しました。「復旧には4億円が必要」と同JAの北島清常務理事は話します。
心臓部の機器や乾燥用のボイラーもすべて浸水。この秋の稼働が困難です。「30年稼働して、初めての被害でした。毎年3000トンの集荷がありますが、他の農協に協力をお願いして受け入れをする予定です。運送費だけで1200万円かかる見込みですが、農家に負担を求められません」と苦しい状況ですが、「施設がなくなれば離農する人も出かねないので、なんとか来年までには再建したい」と意欲を見せています。
長谷川会長も「農水省に対しみなさんの実情を伝え、再建が進むよう要請したい」と応じました。
コンバインが使えるか心配

「ここまで水が来ました」と話す冨樫さん
21、22日の両日は山形県の庄内地方で被害調査を行いました。庄内農民連の梶昇司事務局長と酒田市、鶴岡市などを回りました。
特に被害の大きかった酒田市の旧八幡町地域を元八幡町議会議員の加藤俊行さんと調査。まずは同地域の会員、冨樫友子さんの家を訪問しました。
「家は無事でしたが、山から鉄砲水が出て道路の舗装は剥がれ、小屋は数十センチメートルの高さまで浸水しました。小屋の下の田んぼには土砂が流入していて、コンバインで刈れるのか心配です」と冨樫さんは話します。

家が倒壊し軽トラが下敷きに(酒田市八幡地区)
冨樫さんも同行し八幡地域内を流れる荒瀬川の流域を調査。いたる所で川の決壊が発生。国道も流されて仮設の道路が設置され、流域の家屋や田畑には大量の土砂と水が流れ大きな被害を出しています。
また荒瀬川の下流域には特産の刈谷梨の果樹園が広がっています。河川敷内の畑は土砂が積もり、ゴミが木に引っかかり、一部では根こそぎ梨の木が流され、大きな被害です。
野菜にも被害が出ており、美川町のパプリカ農家、中野太一さんはハウス内に水が入り、病気の発生で収量が減少しています。
鶴岡市のネギ農家、阿部佑一さんの畑も2日間水没し、ネギが病気で枯れはじめ、「1~2割は収量が減りそうです」と被害が出ています。
鶴岡市の特産、だだちゃ豆にも大きな影響が出ています。庄内産直センターの小林隆範組合長は「浸水と高温多湿で、豆の成長が遅れたり、病気が発生したりで、大幅な収量減になっています」と話します。生産者の太田一男さんも、「早生品種は平年の3分の1、白山は半作程度になりそうです」と厳しい見通しを語ります。
現地と協力し支援を要請
月山のふもとの旧朝日村(現鶴岡市)の地域では、田んぼの、のり面の崩落も発生しました。
山形県は国の事業の対象から外れる小規模の被災に対しても支援策を出しています。県の査定基準の再確認や、自力復旧への市町村の支援を市に要請することなどが必要です。
秋田県連の鈴木事務局長は「災害で離農者を出さないよう、できることを全力でがんばりたい」と決意をしています。
農民連本部は現地や秋田、山形の両県連と連携して、被災農家への支援を強く要請します。