アイコン 新聞「農民」

映画紹介「山里は持続可能な世界だった」(84分)

監督・原村政樹

山村の息吹を伝える力作

 「過疎化が進む山里は本当に貧しく、寂しい所なのだろうか?」という問いかけから映画は始まる。そこで昭和40年代以前に青少年時代を山里の村で過ごした70代から90代の人たちに、当時を記録した写真を見てもらいながら、話を聞くことにした。
 すると、「貧しく厳しい時代だったが、張り合いがあった」、「子どもや若者が大勢いて、家族を超え皆が助け合いながら暮らしていた」と皆、生き生きと話し始めた。「子どもの頃は家の仕事を手伝うことは当たり前、それが生きる力となった」、「多くの家族は山林を所有していなかったが、暮らしに欠かせない薪は共有林で得ることができた」とも語る。
 今も当時の生業の継承者たちは山里の環境を守る知恵を受け継いでいた。森は20年に1回、伐採することで新たな命が蘇り再生する。森の生き物たちと共存できるようにむやみに資源を乱獲しない。風雪に耐えて育った山の恵みに感謝の心を忘れずに生きる、など、持続可能な世界を実現するための知恵がたくさんあった。そんな山里の暮らしから私たちは何を受け継げばいいのだろうかとの問いかけで映画は終わる。
 映画では戦後の林業政策や木材の輸入自由化にも触れ、国の政策が森林の荒廃と山里の衰退につながった歴史も伝える。

 監督・撮影・編集 原村政樹
 語り 的場浩司(俳優)
 ▼映画館上映情報
 (1)9月6日(金)~19日(木) 2週間ロードショー
 ・ヒューマントラストシネマ有楽町(東京都千代田区有楽町2丁目7―1)
 (2)10月5日(土)~18日(金) 2週間上映(火・水休館)
 ・川越スカラ座(埼玉県川越市元町1―1―1)
 ※詳しい上映日程、料金等は各映画館のホームページなどで確認を。
 以後、全国で順次公開。