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地元の米を地元の消費者に 生産者・米卸・米屋の共同事業が始動

埼玉県「彩の国産直米プロジェクト」

(右から)ナンブの武笠さん、松本さん、塚田さん。左上の販売シールは久喜市のイラストレーターで新婦人会員、田村八重子さんのデザイン

 埼玉県内の農民連会員農家の農産物を取り扱っている農事組合法人「埼玉産直ネットワーク協会」(埼玉県加須(かぞ)市)はこのたび、地元でつくった米を県内の消費者に食べてもらおうという新たな取り組み、「彩の国産直米プロジェクト」を本格始動させました。「彩の国」は埼玉県の愛称です。
 このプロジェクトは、県内の農民連会員がつくる米を県内の米卸、米屋が共同購入し、統一の販売シールを付けて県内の消費者に販売するというもの。埼玉産直ネットの呼びかけに賛同したナンブ(さいたま市)、松本米穀精麦(熊谷市)、ライスセンター金子(川越市)、米工房ひろおか(さいたま市)が参加します。
 初年度の今年は、米の生産量が県内最多の加須市の中で「幻の加須コシヒカリ」と呼ばれる旧北川辺・大利根地域で作られるコシヒカリを販売します。来年度以降、順次産地や品種を増やしていく計画。
 プロジェクトを進めてきた埼玉産直ネットの専務理事、松本慎一さん(埼玉農民連副会長)は「世界で起きる紛争や戦争、異常気象、減少する農家戸数、高齢化、そして埼玉県の食料自給率は10%です。私たちは埼玉のおいしい米を埼玉の皆さんに食べてもらうために、力を合わせて協力していくことにしました」と意義を語ります。
 今回、プロジェクトとして3つの合意をつくりました。(1)生産者価格は農家の生産費をもとに決定するという生産費保障方式、(2)農薬・化学肥料を減らしていく努力をして、持続可能な農業・米づくり、地域環境を守り、食料自給率の引き上げを目指す、(3)売り上げの一部をフードパントリーや子ども食堂に寄付する、です。
 大利根地域に住む47ヘクタールの米農家で、埼玉産直ネットの代表理事、塚田静男さんは「ここ5年、米づくりは赤字。コスト高で釣り合いがとれない。このプロジェクトを通じて再生産できる価格で米が売れることを期待したい。近年の酷暑の中での減農薬栽培はなかなか厳しいが努力したい」と抱負を語りました。県内最大の米卸会社、ナンブの武笠将晴課長代理も、「地場産の農家さんを支え、先々を見すえて農家さんと消費者との結びつきを私たちとしても強めていきたい」と意気込みを語りました。
 松本さんは「今年は米の概算金が昨年よりかなり上がったが、農家がやっていける価格で今後も推移する保証はない。このプロジェクトを通じて新規会員も拡大していきたい」と話します。
 「彩の国産直米プロジェクト」の米は9月初旬から販売されます。