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PFAS 有機フッ素化合物 農民連 食品分析センター 全国54地点で水質調査 6地点で目標値を超過

 農民連食品分析センターは全国の公共の水のPFAS(ピーファス、有機フッ素化合物、説明は別記事に掲載)汚染の検査を行っています。これまでに54カ所の河川の水などを調査してきました。その結果、50カ所から検出があり、6カ所で日本の水道水の暫定目標値を終えるPFASが検出されました。(図)
 PFASは発がん性のほか、一部の疾病や子どもの成長、免疫にも悪影響を与えることが指摘されています。
 大阪府摂津市では周辺農家の農地が汚染され野菜からも高濃度のPFASが検出。井戸水は飲んでいないのに血中からも高濃度のPFASが検出されたことで、野菜からの移行が疑われます。農家にとっても農地や農作物の汚染、自らの健康被害など、PFASの汚染は一大事です。
 調査結果を見ると、PFASの発生原因となりやすい軍事基地や工場が近隣になくても、北海道の礼文島など多くの場所で少量の検出がありました。

 東京近郊では3カ所も暫定目標値を超え、秋田県や宮崎県でも目標値を超過した地点がありました。検出された最高値はPFOSとPFOA(ピーフォスとピーフォア、ともにPFASの一種)の合計値で、1リットルあたり436ナノグラム(暫定目標値は1リットルあたり50ナノグラム)。目標値の約9倍にもなります。
 地下水の湧水がある地点でも検出された一方、人間生活からかけ離れた山の湧き水からは検出がなかったことから、人間の生活により地下水の汚染も進んでいることが見えます。まずは身の回りの汚染状況を把握することが必要です。農水省が推進している下水汚泥から高濃度のPFOAが検出された事例もあります。
 PFASの検査運動は住民が中心となって各地で行われ、環境省も調査に乗り出すなど、市民の運動が行政を動かし始めています。しかし、調査箇所はまだほんの一部です。

 地域の新日本婦人の会のみなさんなど他団体とも協力して、全国で一大検査運動を起こしましょう。
 農民連食品分析センターでは、全米アカデミーズで健康に対する危険性が指摘された7成分が検査できます。
 水用の500ミリリットルにサンプルの水を採取し、冷蔵便で送っていただければ検査が可能です(採取方法や料金の詳細は表をご覧ください)。

PFASとは

 PFASとは1万種以上もの有機フッ素化合物の総称です。水に溶けやすく分解されにくい特徴があります。PFOSやPFOA、PFHxSなど様々な種類が開発されています。
 1938年にアメリカのデュポン社が開発した「テフロン」が最初。アメリカ軍が導入した消火剤にPFOSが使用され、日本を含む各国へ広がりました。
 防水スプレーやフライパンのフッ素樹脂加工、ハンバーガー等の包装紙、カーペットや衣類の防水防汚処理、化粧品やスマホのコーティング等の生活用品や、消火剤や様々な工場の生産現場での研磨剤や表面処理などにも使われています。
 環境中に長くとどまるPFOSは、人間の体内での半減期も5年と長く、摂取をやめても95%が排出されるのには40年かかります。
 国際がん研究機関(IARC)は、PFOAを「ヒトへの発がん性物質がある」グループ1に、PFOSは「ヒトへの発がん性の可能性がある」グループ2Bに分類されています。また、子どもの出生時の体重や免疫に有害な影響を与えることも研究で指摘。潰瘍(かいよう)性大腸炎や脂質異常など他の疾病も関連性が疑われています。
 日本では摂津市(ダイキン工場の周辺)や米軍横田基地のある東京都の多摩地域で汚染が確認されています。
 アメリカやヨーロッパではPFAS規制の動きが進み、PFOSやPFOAなど代表的な物質は規制済み。すべてのPFASについても規制が検討されています。アメリカは水道水の規制も23年に強化しました。
 しかし日本はPFOS、PFOAは製造・輸入・使用が禁止され、今年6月からはPFHxSも同様に規制されていますが、水道水の水質基準は緩いままです。