全農研が第54回大会開く 埼玉 生態系を生かした持続可能な農業を 地域づくりと有機農業、学校給食を議論(2024年09月16日 第1617号)
農業・農村・農業教育の発展に寄与するための研究を行っている全国農業教育研究会(全農研)の第54回大会と研究集会が8月31日、9月1日に埼玉県嵐山(らんざん)町で開催されました。
子どもと向き合う
運営委員長の高栖敬さん(茨城県石岡市の元農業高校教員でナシ農家)は「今年の基本テーマは地域づくりと有機農業、そこに学校給食の関わり合いを議論したい」とあいさつ。基調報告を行った内山雄平事務局長(新潟県村上市の元農業高校教員)は昨今の教育現場の課題を指摘し、「教員は子どもに向き合う時間が足りないと苦しんでいる」と強調。農業をめぐる情勢として、スマート農業技術の導入と大規模経営を進める農政への危機感を示し、「中山間地の小規模農業も視野に入れた、生態系を生かした持続可能な農業であるアグロエコロジーの確立を進めたい」と述べました。
3人のパネリスト

(右上から時計回りに)内山さん、金子さん、松本さん、高栖さん、田島さん
シンポジウムでは3人のパネリストが登壇。
埼玉県小川町「霜里農場」の金子宗郎さんは、人口2万7000人の中山間地域で昨年、オーガニックビレッジ宣言をした小川町の「有機農業集落」としての地域づくりについて「技術的側面だけでなく、自然環境と人間社会の歩みとして『循環・自給・多様性』を大事にしてきた」と解説。また、有機JAS取得農家がいない中で地域の参加型認証(PGS)に取り組んでいることに参加者から注目が集まりました。
さいたま市の見沼田んぼで自然栽培「こばと農園」を営む田島友里子さんは、8年前に農園経営者として独立。同時期に1歳の長女を育てながら(夫さんは国家公務員で単身赴任)様々な苦労や経験を積んだことで現在、独立新規就農者支援を行政と連携しながら行っていることを報告。「都市と有機農業の新しい形として、さいたま市で新規就農者が増えている。私たちがここで楽しく農業をする姿が、物質的だけではないつながりや循環を生んでいます」と生き生きと語りました。
東京都東久留米市の公立小学校栄養教諭、松本恭子さんは「食材を生かし、考える心を育む」給食の日々の実践を報告。子どもたちに知る機会や体験を提供することで、自ら考えて表現する、行動することを育む食教育の重要性について、「これは農家さんがいないと成り立たない。“子どもたちのための食材”という学校給食ならではの価値観を共有し、地域の営みや文化をつないでいきたい」と語りました。
農業高校の実践報告
シンポジウムの後半では、新潟県と茨城県の農業高校の実践報告も行われました。近年、情報通信技術を活用したスマート農業(ドローン散布やトラクターの自動操縦など)をカリキュラムに取り入れる農業高校が多い中で、「有機稲作づくりの実践」と「無農薬栽培ブドウづくりの実践」報告がされました。
翌日の分科会では、地域と農業、教育実践などについて議論しました。