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「農民の権利宣言」実施へアジアの農民組織が議論 ビア・カンペシーナ アジア会議に参加して(2024年09月23日 第1618号)

権利侵害や改善点など
声を国連に届ける

農民連国際部長・岡崎 衆史

 農民と農村生活者の権利を網羅した「農民の権利宣言」の実施に向け、国際農民組織ビア・カンペシーナのアジアの加盟組織が8月18から20日までインドネシア・ボゴールで開催した会議に、農民連を代表して参加してきました。

宣言活用して各国で抵抗を

会議で報告するSPIのサラギ議長

 農民の権利宣言は2018年に成立。国内法制度化に向けた動きがある一方で、日米政府のように背を向ける国も存在します。こうした中、国連人権理事会は昨年10月、権利宣言の普及に向け障害を取り除くための作業部会の設置を決議。今年10月に第1回会合が開かれます。
 ビア・カンペシーナの会議は、各国での権利侵害の実情や改善に向けた努力を報告し合い、国連の作業部会の議論に内容を反映させることが目的です。
 インドネシア農民組合(SPI)の代表は、宣言19条の種子への権利を掲げ、インドネシア政府のUPOV(ユポフ、植物新品種の保護に関する国際条約)への加盟を食い止めてきたと報告。UPOV条約(特に91年改訂版)は種子の育成者権を過度に強化し、農民の種子の権利を侵害していると批判されてきました。

十分な所得実現 協同組合活動も

 同国ではまた、国の人権機関が、権利宣言を取り扱い対象に含めることを決めたといいます。SPIの代表はさらに、16条の十分な所得への権利を実現するため、協同組合活動に力を入れていることを紹介しました。
 韓国女性農民組合(KWPA)の代表は、空港や工場建設による農地の収奪に抗議した農民運動の指導者が逮捕されたことに対し、権利宣言を掲げて抵抗していると述べました。

所得・食への権利 日本でも侵害

 農民連からは稲作農家の時給が2年連続10円となるなか、16条の十分な所得への権利が侵害されていることを報告。
 また、食料自給率38%が続く一方で、政府が自給率を向上させる責任を完全に放棄する動きさえも起きていることを指摘し、16条の食への権利と食料主権に違反していると強調しました。
 会議が開かれたSPIの研修施設には、アジア10カ国から約30人が参加しました。会議での発言はビア・カンペシーナの代表を通じて国連の作業部会に届けられます。