農民連青年部 夏の学習交流会 in 奈良 「全国に仲間がいる」再確認
驚き・発見・共感つぎつぎ

懇親会ではおいしいネパール料理を食べながら盛り上がりました
9月28、29両日に奈良県生駒市で開かれた農民連青年部・夏の学習交流会。開催に先立って平間徹也部長(宮城県蔵王町のハーブ農家)は「農業・農政の在り方が問われている中で、農民連の活動を各地で生かしていくために、5年ぶりの開催となるこの交流会を1つの契機にしよう」とあいさつ。奈良県農民連の原澤康治青年部長(天理市のニンジン農家)は「生産者が少なく、ほとんどが消費者という奈良でどんな農業生産や直売所経営をしているのか見てもらい、地元に持ち帰っていただきたい」と述べました。
現地視察では農業法人「ゲミューゼ」(奈良市、ドイツ語で野菜という意味)の島田優さん(30、代表取締役)と藤井宏次さん(30、取締役)から話を聞きました。
近畿大学農学部卒業の同級生という2人は、大学時代から野菜作りやマルシェ、食農教育に取り組んできました。2017年、大学4年生のときに農業法人としての経営をスタート。現在、奈良市と大和郡山市の農地約2ヘクタールで1年を通じて旬の野菜をつくり、奈良産直センターにも出荷しています。
「食料生産をする中で、残留農薬や不十分な行政の制度的支援、農業従事者の高齢化などの課題に向き合ってきました」と話す島田さんたちは農福連携にも力を入れています。生駒市の福祉施設と連携して協働農園での野菜づくりを通年で行っており、農業空間が持つ「人と人をつなげる力」を大切にする実践を紹介しました。
「地域を盛り上げながら、売り手・買い手・世間の『三方よし』の農業を目指して、毎年勉強しています」と話す島田さんと藤井さんに対して参加者から「採算はどんな感じですか?」「パートさん含め、何人で運営していますか?」など質問が相次ぎました。
続いて、奈良産直センターが経営する直売所「みのりの里しらにわ」(生駒市)を視察し、店長の杉村出(いずる)さんから話を聞きました。
杉村さんは生駒市で地域密着型の直売所を運営する利点として、「ベッドタウンとして開発されたこのエリアは畑がとても少ない。だから昔からこだわった作り方で単収を上げてきた農民の歴史があり、全国に知られるような“一大産地”がなく、逆に言えば少しずつ“何でもある”と言える。旬な農産物を少量多品目で扱う直売所としての強みです」と解説。
もう1つの直売所(広陵店)と合わせた2店舗の年間売り上げが昨年度2億5000万円を超えたことが報告されると参加者から驚きの声がもれました。
杉村さんは「生産者とのコミュニケーションがとても大切」と強調。「他の直売所との価格競争に巻き込まれないように、お客さんへの情報開示やこだわり紹介、ちょっとした売り方の工夫で野菜の価値が高まることも含めて、こちらは売るプロとして生産者に情報を伝え、生産者の皆さんには栽培管理カードの提出と農薬の使用状況のチェックをお願いしています」と日々の実践を紹介しました。

(右上から時計回りに)平間さん、原澤さん、藤井さん・島田さん、杉村さん、植田さん
参加者は販路拡大に向けたアドバイスを求めたり、商品としての売り方の工夫などを熱心に質問し、店内を視察しながら買い物をしました。
初日の夜は「現地よりおいしいネパール料理が食べられるお店。地産地消を大切にしていて、いつも直売所の野菜をたくさん買ってくれる」と1年間のネパール滞在経験がある杉村さんが太鼓判を押す、「PARIWAR(パリワール)村」で懇親会を行い、あっという間の交流時間を過ごしました。
2日目は生駒山山麓公園のふれあいセンターに多彩なゲストを迎えて「持続可能な地域づくり」を学びました。(講師の紹介は下段に掲載)
講義を聞いた参加者はグループに分かれ、思い思いの感想を出し合いました。「大阪では『農業ボランティアを募集したら無償で集まってくれる』という話にびっくりした。人口減・高齢化、農業の担い手が減る一方の自分の地域でどういうことができるだろうか」「“草取りはきついし、誰もやりたがらない”という固定観念を自分たちが持ってしまっていないだろうか!? イベントやゲーム感覚で楽しめる企画を地方でもやってみるのはどうか」などの議論が交わされました。
青年部役員で京都府和束(わづか)町のお茶農家、植田修さんは「顔を合わせて悩みや考え、アイデアを出し合えて、意義があったのではないでしょうか。私も農家をしていると、1日誰とも会話をしない日もあり、『何のためにやっているんだろう』と思うこともありますが、全国に仲間がいる、自分たちがつくるものを待ってくれている人たちがいる、ということを再確認できた。また来年会いましょう!」と呼びかけて夏の学習交流会を終えました。
「持続可能な地域づくり」多彩な取り組み 夏の学習交流会に講師として参加した皆さんを紹介します。

〇副島久実さん 摂南大学農学部准教授 大阪の農と食に関わる女性たちの取り組みを研究。「“食べるシーン”を想像して農業に従事できることが女性農業者の強み」と話す。

〇森田広幸さん 生駒市の農業法人「未来農業研究所」代表取締役 野菜生産をしながら県や市の委託を受けて、農業の担い手を育成している。

〇松村邦子さん 京都府和束町の一般社団法人「和束町活性化センター」農園責任者 家庭の生ごみから完熟堆肥をつくる取り組みを現在51軒の一般家庭と実施している。

〇岩田文明さん 奈良市の「月ヶ瀬健康茶園」代表取締役 耕作放棄茶園の再生と、地域に育つ自然の草木の循環でつくるお茶づくりを実践している。

〇小川泰文さん 「類農園」奈良農園副農場長 大阪の設計会社が経営する直売所の営業として、地域の隠れた魅力・農産物を紹介してきた。今年から農業生産の現場に。

〇西澤亜希子さん 「コープ自然派奈良」理事 地元の橿原市で学校給食に地場産農産物を導入する運動や、農家支援プロジェクトに取り組み、ご自身も生産者。