アイコン 新聞「農民」

石破新政権で自給率向上は?裏金は?大軍拡は? ウソつき石破政権の農政を斬る

「共感と納得」どころか「反感と不満」

「手のひら返し」「言行不一致」「二枚舌」――世論の強い批判の中で石破茂・自公政権がスタートし、すでに総選挙まっただなか。石破首相は「共感と納得」「日本を守る」「成長を力に」「国民を守る」などのスローガンを掲げていますが、日本や国民を守るどころか、逆に平和や国民の暮らしをいっそう危機に陥れる危険な政治に「反感と不満」が強まっています。

「自給率を政策目標にしない」

 農水大臣を務めた石破氏に「農政通だから期待できる」という声がありますが、本当でしょうか? 石破氏の国会議員歴は36年。自民党幹事長も経験し、農業つぶしの自民党農政「通」であることはまちがいありません。
 農政について同氏は2つの重大な主張をしています。(1)「自給率を政策目標にしてはいけない」という自給率目標を敵視する主張、(2)政府による米の需給・価格の安定に対する責任を放棄し、市場に丸投げするという主張です。両方とも、今問われている事態に直結する大問題です。
 総裁選の最中に行われた討論会(9月24日)で、石破氏は「自給率の概念そのものが問題」だとし、自給率目標を変えるべきだと訴え、異彩を放ちました。以前には「自給率のみに拘泥し、政策目標にしてはいけない」と明言(農業協同組合新聞、18年8月27日)。
 来年3月に閣議決定される「食料・農業・農村基本計画」。政府の責任で自給率を向上させる計画にするかどうかが焦点になっています。しかし、石破首相のもとでは、自給率向上目標そのものが消えてしまいかねません。

米パニックを引き起こした元凶

 農相当時の09年、石破氏は米の生産調整の強化から廃止にいたる9段階のシミュレーションを農水省に行わせ、米価が60キロ7500円まで下落することを織り込んだ米政策改革案を発表しました。
 石破改革案は自民党政権崩壊・民主党政権誕生で頓挫(とんざ)しました。しかし、復帰した安倍政権のもとで、改革案は息を吹き返し、需要ぎりぎりの水準まで減産を押しつける綱渡りの米需給政策に逆戻りしました。当時、「減反廃止」の掛け声が飛びかいましたが、「廃止」されたのは減反ではなく、米の需給と価格安定に対する政府の「責任」でした。これが現在の米パニックを引き起こした元凶です。
 しかし、同氏は全く無反省。石破氏は総裁選で「米の増産にかじを切り、輸出を拡大する」と訴え、「生産拡大に伴う米価下落には『直接所得補償』で対応するとし、水田転作などに充てている約3500億円を財源とする考えを表明」(日本農業新聞9月28日)。得意の「二枚舌」に加えて、新たな財源は1円も出さないという冷酷でケチ、米パニック解決には何の役にも立たない政策です。

党内きっての改憲・タカ派

 石破氏は政策の筆頭に「憲法改正」を挙げ、日米軍事同盟の強化とともに、アジア版NATO(北大西洋条約機構)を提唱しています。
 さらに石破氏はアメリカのシンクタンクに9月27日、「米国の核兵器の共有やアジア地域への持ち込みを検討」「米国と肩をならべて自由主義陣営の共同防衛にあたる」と寄稿するなど、改憲・タカ派の主張をエスカレートさせています。
 また、「自衛隊を米軍の東アジアの重要基地の一つであるグアムに駐留させ、抑止力強化を図ること」まで提案しています。
 これらは、安倍・岸田政権を超える軍事同盟強化、軍拡路線を推進することの表明に他なりません。
 石破氏の改憲タカ派ぶりは筋金入りです。93年には「憲法改正論議を凍結する」という方針を掲げた自民党に反発して離党し、新生党に加入。96年には同党が「集団的自衛権は行使しない」を掲げたため、またまた離党して自民党に復党。

消費税の大幅増税をねらう

 消費税増税に一貫して賛成してきた石破氏は、総裁選の中で「引き下げは今考えていない」とするものの、将来的な増税については「党税調で議論する」と否定していません。市場関係者の中では消費税15%がささやかれています。

自民党政治の行き詰まりは明らか

 総裁選で石破氏が高市早苗候補を逆転したのは、影響力維持をねらう菅元首相・岸田前首相の暗躍によるもの。  裏金事件によって自民党が国民の信頼を失い、「党再生に向けて派閥を解消したとアピールしておきながら、実際には決選投票直前に派閥ボスたちがキングメーカーの座を賭けて水面下で数字合わせに走っていた」のが実態です(集英社オンライン、9月28日)。
 「党内野党」が売りだった石破首相の政権は、安倍政治に続いた菅・岸田政治を継承する傀儡(かいらい)政権にほかなりません。また「非主流派の在庫一掃セール」(政治評論家の田崎史郎氏)と酷評される石破内閣は一時しのぎの「表紙替え内閣」でもあります。
 自民党政治には未来はなく、行き詰まりは明らかです。行き詰まった日本の政治や経済を打開し、真の平和の道を切り開く総選挙にしようではありませんか。

国家戦略特区担当の特命大臣 安倍農政改革を支えてきた過去企業の農業参入と農地所有に道開く

あちこちに耕作放棄地が広がる兵庫県養父市の農業特区

 石破首相を「農政通」、「地方の現場がわかる」などと評する声があります。
 しかし、麻生内閣で農水大臣を務め、安倍政権のもとで自民党幹事長や国家戦略特区を担当する特命大臣などを歴任するなど、戦後農政の枠組みを破壊して国民と農民に苦しみを押し付けてきた石破氏の過去は消し去ることはできません。

食料と農業、農村の危機に拍車

 故安倍元首相は、2014年1月にスイスのダボスで開かれた「世界経済フォーラム」で自らの改革を「アベノミクス」と自画自賛し、「40年以上続いてきた、米の減反を廃止します。民間企業が障壁なく農業に参入し、作りたい作物を、需給の人為的コントロール抜きに作れる時代がやってきます」「これらはみな、昨年の秋、現に、決定したことです」と豪語しました。
 安倍「農政改革」は、戸別所得補償の廃止をはじめとした米価と需給に対する責任放棄、企業の農地所有に道を開く農地法改悪や経済特区と一体に農業委員会機能の骨抜き、農協「改革」など、戦後農政の枠組みを木っ端みじんに破壊するものでした。これが今日の食料と農業、農村の危機に拍車をかけました。

家族農業を締め出す先頭に立つ

 この戦後最悪の農政を支えてきたのは誰だったのか。石破氏は、2012年に自民党幹事長に就任してアベノミクスを支えるとともに、14年には内閣府特命大臣として企業の利益を最大化するための「国家戦略特区」を推進し、農業では農業特区で企業の農業参入と農地所有に道を開いてきました。
 自給率向上を敵視し、「需要に応じた米作り」で稲作農家に低米価と減反を押し付け、米不足へのレールを敷き、家族農業を締め出す先頭に立ってきたのが石破首相でした。  石破首相からこれまでの農政を転換する意思はみえません。

「戦争する国」へ都合いい布陣 抑止力の強化、軍事力の抜本強化

日本平和委員会 常任理事 末浪 靖司

 政権についた石破茂首相がまず語ったのは、国家安全保障戦略にもとづき抑止力の強化、軍事力の抜本強化に取り組むということでした。
 国家安全保障戦略は、岸田前内閣が決めたもので、中国などの脅威を理由に、日本が敵基地攻撃能力(反撃能力)をもつというのが中心です。
 岸田前内閣が支持率1割台の低迷を続けてやれなかったことを、石破政権が強行するというのです。

敵基地攻撃は米軍と連携して

 敵基地攻撃とは、戦前の日本に返ったみたいですが、石破首相はその実行を最初に誓約したのです。敵基地攻撃は、自衛隊だけではできません。米軍の戦争に自衛隊が加わるのです。
 石破氏は、北大西洋条約機構(NATO)をモデルにした「アジア版NATO」をつくると主張しています。
 NATOは北米と欧州の諸国による多角的軍事同盟ですが、これは日本にはできません。
 日本ではかつて侵略戦争を起こした勢力の後継者が反省なく政権についており、米軍との共同作戦でやるのです。
 石破氏は、「日米同盟強化」を主張し、「陸海空その他の戦力を保持しない」と定めた憲法9条2項を削除して、「国防軍をつくる」と、アメリカに売りこんできました。
 それは自衛隊が海外で戦争して戦死者がでる道です。
 石破氏が軍法会議を創設して、命令を拒否すれば「死刑」「懲役300年」とまで主張してきた(13年4月21日BS番組・しんぶん赤旗9月30日付)というのも、国民を戦争に動員するには、そうした強権が必要だからでしょう。

地位協定改定は対米従属変えず

 石破氏は日米地位協定の改定を売りものにしてきましたが、首相就任直後のバイデン米大統領との電話会談では一言も言えませんでした。
 改定の中身も、米軍特権を定め対米従属を保障しているのは変えず、基地管理に自衛隊を加え、米軍の負担を減らすだけです。
 石破内閣の閣僚も、安保法制(戦争法)を強行した中谷元・防衛相、辺野古への土砂投入を強行した岩屋毅・外相、改憲論者の武藤容治・経済産業相など、日本を戦争する国にするのに都合のよい布陣になっています。

大ブレ 裏金疑惑の解明にフタ 二転三転後 大多数を公認

 石破首相の前言翻し、二枚舌がよく現れているのが裏金問題です。
 就任後初の記者会見(10月1日)で、石破首相は裏金問題の「再調査が必要だとは承知していない」と述べて、再調査を拒否しました。
 裏金議員の選挙での公認問題については、総裁選では非公認を示唆していましたが、「選挙区においてどれぐらいの支持を得ているか」で判断するとし、結局「『裏金議員』原則公認」(朝日10月4日)と前言を翻しました。

右往左往「非公認」⇒ 「原則公認」 ⇒「一部非公認」

 しかし、報道各社の世論調査で裏金議員の公認反対が75%に達し、このままでは自民党全体が沈み「過半数割れの恐れもある」との情勢判断から、石破首相は6日(日曜日)に急きょ記者会見。下村博文、萩生田光一氏ら特に悪質な一部の裏金議員を非公認とする方針に転換しました。しかし、その範囲は自民党調査で判明した裏金議員51人のごく一部。裏金議員の大多数を公認するというのです。
 国民をなめてかかった二転三転のドタバタ劇。選挙で目に物を見せてやろうではありませんか。

疑惑の中心人物は 最高顧問に処遇

 首相就任後、自民党の選挙対策委員長には裏金事件の解明に消極的な小泉進次郎氏を配置。派閥ぐるみの裏金疑惑の中心である麻生太郎氏は、最高顧問に処遇しました。
 また、石破派が政治資金パーティーの収入を6年間で計140万円分、不記載にしていた事実が新たに判明。石破派にも、他派閥と同じ裏金疑惑が持ち上がっています。
 さらに、石破首相が自民党幹事長在任中の2年間で政策活動費を17億5050万円受領していたことが分かりました。政策活動費は支出を受けた政治家個人名を書くだけでよいとされ、その先の使途はブラックボックスになっており、事実上の“裏金”です。