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農民連女性部 農村女性ジェンダーアンケート調査に630人が協力 家族農業の持続的発展こそジェンダー平等実現のカギ

収入減と長時間労働は深刻

若い世代の女性ほど「忙しすぎる」

 農民連女性部は、今年4月から9月にかけて、「農村女性の地位向上に関するアンケート」調査を行い、47都道府県、630人の農村女性から回答を得ました。集計結果から、農業収入が減少するもとで、農村女性の長時間労働が深刻化し、ジェンダー平等に相反する状況に拍車がかかっている現状が浮かび上がってきました。

農村女性自身の手で実態を調査

 今回の調査は、10月の国連女性差別撤廃委員会(CEDAW)日本報告審議に向けて、日本の農村女性の実態が十分に反映された「総括所見」が勧告されることを求めて、農村女性の実態を農村女性自身による調査で明らかにすることを目的に行われました。
 質問項目は、年齢や地域、経営内容、労働時間や休日日数、自分と夫の家事労働時間、農業収入の変化やその対処方法、農業収入や農業労働の対価の管理、地域の農業委員会や農協役員などへの女性の進出度合い、健康問題、悩みや心配事とその相談相手の有無などの21項目です。
 全国女性部の役員や地域の女性部、農民連の各県連事務局などを通じて、女性会員にアンケート用紙を配布・回収したほか、農民連会員に限定せず幅広い農業女性に協力を呼びかけ、アンケート調査を実施しました。

「働きづめ」の農村女性たち

調査結果を記者会見で発表する農民連女性部の沖津由子部長(こちら向き左から2人目)と皆さん

 今回の調査で、特徴的だったのが、農村女性の長時間労働です(図1)。1日の労働時間が8時間以上という回答が約6割で、このうち10時間以上は16・7%。なかには15時間、16時間、18時間という回答も複数ありました。
 とくに20~50代の青壮年世代の女性ほど長時間労働が顕著で、8時間以上が73・8%、10時間以上は18・1%に及んでいます。
 女性はこのほかに家事(育児・介護含む)も担っており、1日の家事労働時間の平均は3時間43分、家事の休日は2人に1人が「なし」と回答するなど、農村女性の「働きづめ」の様子が浮き彫りになりました。
 一方、夫の家事時間はというと、「ゼロ」と「1時間」が合わせて7割近くに及んでいます。しかし同時に、3時間以上の家事を担う夫も2割を超えており、農業労働時間は夫の方が長いことも多いと推測されます。
 まだ力仕事も多い農業では、性別分業すべてがジェンダー差別ではありません。問題なのは、長時間労働が深刻化する一方で、対等な立場での話し合いと合意もなく性別役割分担が固定化され、家事を含めた女性の長時間労働が当然視されていることです。

収入減補うため長時間労働に

 調査結果のもう一つの特徴が、農業収入が大幅に減少している点です(1面図2)。約半数の女性がここ数年で「減った」と回答し、そのうち10%の回答者が5割以下の減収、なかには7割、8割の減収という深刻な事態です。
 具体的な減少額では100~300万円という回答が多く、とくに畜産農家からは、「2400万円減収し、赤字で生活している。継続できるか心配」、「この3年間で2000万円借金が増えた」「300万円減収したが、対処法はない」「800万円の減収。悩みは夫が手術した腰を痛がること」など、痛切な声が相次ぎました。
 また減収の対処法として、30~50代の青壮年世代ほど「規模拡大」との回答が多く、自由回答欄でも「忙しすぎる」「休みがなく、体力に限界を感じる」との悩みが多く寄せられました。
 健康上の不調を訴える声は、全世代で非常に多かったのですが、若い世代でもストレスによる生理不順など健康問題を抱えてがんばっている姿が浮き彫りになりました。

ジェンダー平等へ家族農業支援を

 農水省は、「女性の活躍」は掲げても、その内実は農業女性の「仕事と生活のバランスに配慮した働き方を推進」するなど、性別役割分担の固定化や女性の補助的役割を是認する政策内容となっています。白書や公的な報告書などの記述にも「ジェンダー」という用語をまったく使わず、ジェンダー平等をどう実現するかという視点にたった農村女性の実態調査も行っていません。
 多くの農村女性が「目いっぱいに働いても、農業で生活できない」というギリギリの状態にあります。農業が生業(なりわい)として成り立ち、安心して生産が続けられなければ、農村のジェンダー問題は解決できません。農民連女性部では今後も、価格保障や所得補償など家族農業への支援策の強化を求め、この調査の結果を活用していくことにしています。

 農民連女性部は10月10日に記者会見を開き、集計結果を発表。会見には沖津由子部長、山﨑正子、髙橋マス子両副部長が参加しました。