アイコン 新聞「農民」

中間貯蔵施設から見える矛盾と大問題 「反原発」と「反核燃料サイクル」の運動は一体で!

 「原発をなくす全国連絡会」は10月10日、青森県労連議長で「核のゴミから未来を守る青森県民の会」共同代表の奥村榮さん(写真)を講師にオンライン学習会を開催しました。講師の奥村さんの講演要旨です。

青森県労連議長 奥村 榮さん

 今年の9月26日、青森県むつ市につくられた中間貯蔵施設に使用済み核燃料が初めて搬入されました。この使用済み核燃料は東京電力の新潟県・柏崎刈羽原発から出されたものです。
 東電は、廃炉が決定している福島第一・第二原発を除いて、所有する唯一の原発である柏崎刈羽を一刻も早く動かしたいと考えていました。しかし、原発内の使用済み核燃料を入れるプールが貯蔵率80%を超えている問題を抱えていました。
 核燃料棒は核分裂を続けると効率が落ちてくるため、原発の稼働維持のためには、どうしても定期的に新しい燃料棒との交換が必要となります。ところがプールがいっぱいでは、新しい燃料棒と入れ替えることができない。そこで東電は、再稼働のために使用済み核燃料をむつ市の中間貯蔵施設に搬出したのです。

各地の原発で容量満杯が間近

 この状況は他の原発も同様です。下の図のように、全国の原発の貯蔵プールは軒並み貯蔵率70~80%となっています。
 むつ市の中間貯蔵施設は、東電と日本原子力発電が共同出資した会社が運営しています。関西電力が昨年、「私たちの使用済み核燃料も搬入させてほしい」と申し入れましたが、むつ市長(現青森県知事)はこれを断固拒否しました。苦肉の策として関西電力が打ち出した案が、中国電力と共同で山口県上関町に中間貯蔵施設をつくる、という計画でした。
 なぜ全国の原発でこのような事態が起きているのか。それは青森県の六ヶ所村にある核燃料再処理工場の完成の目途が全くたたないからです。1993年に建設が開始され、97年完成予定でしたが、31年経った今でも完成していません。
 日本の原子力政策の大原則として、「全量再処理」という方針があります。これは、ヨーロッパのように使用済み核燃料をそのままゴミとして処分せず、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す再処理(=六ヶ所再処理工場)を経て、そのプルトニウムを使って高速増殖炉でさらにプルトニウムを増殖させるという「核燃料サイクル」が大前提でした。

高速増殖炉廃炉サイクルとん挫

 しかし、ご存じのように福井県の高速増殖炉「もんじゅ」は重大事故により廃炉になり、プルトニウムの使い道がなくなってしまいました。そこで考え出されたのが、ウランとプルトニウムの混合酸化物であるMOX(モックス)燃料を原発で燃やすプルサーマル計画です。そのためにも再処理工場の稼働が必要ですが、六ヶ所の再処理工場は稼働の見込みがない。つまり日本の原子力政策の根幹である「核燃料サイクル」はすでに破綻しているのです。六ケ所の核燃料サイクル施設には、これまで17・5兆円がつぎ込まれていますが、今後どれだけ膨らむのかも分からず、その経費は私たちの電気料金でまかなわれています。
 各地の原発と立地自治体は「全量再処理による核燃料サイクルの実施」を基に、安全協定を結んでいます。「原発で出た使用済み核燃料は六カ所の再処理工場に搬出するので安心してください」という約束です。

日本の原発は止められる

 むつ市の中間貯蔵施設も貯蔵期間は最長50年、というルールです。しかし現状、約束が実現するとはとても思えません。青森県知事は、「一時保管している使用済み核燃料はリサイクル燃料であって、使われずにゴミになることが決まった時点で直ちに原発に返す」と明言しています。つまり、六ケ所の再処理工場が稼働しなければ、使用済み核燃料を原発から搬出できず、日本の各原発は止めざるを得なくなってしまうのです。

共闘し多くの国民に広げよう

 私が一番言いたいことは、「反原発」の運動と「反核燃料サイクル」の運動は一体にやらないといけない、ということです。大きな矛盾と問題をはらんだこの構造を多くの国民が知り、声をあげれば日本の原発を止め、再生可能エネルギーへの大転換ができます。
 私たち県民は、原発・再処理工場・中間貯蔵施設がある青森県が「このままだと核のゴミ捨て場になってしまう」という危機感を強めています。そのため、県内の反原発・反核燃に関わる市民団体や労働組合、政党が1つになって共闘を組み、運動しています。このような運動を全国で展開していってもらいたい。そのためにも、11月30日に青森市で開催される全国集会にぜひ各地から参加していただきたいと願っています。

青森県を核のゴミ捨て場にするな!~核ゴミいらない青森フォーラム~

主催 核のゴミから未来を守る青森県民の会、原子力資料情報室(参加費無料)
日時 11月30日(土)午前10時15分~午後4時
場所 青森市民ホール(青森駅東口徒歩2分)
問い合わせ 浅石法律事務所・核燃料サイクル阻止1万人訴訟原告団内 電話0178(47)2321