朝市の直売を基礎に地域問題を話し合う交流の場
にぎわいと潤いあふれる魅力的な地域にしたい
紀南支部 三重
三重農民連会長 長澤 真史
三重農民連は南北に広がる三重県の地理的条件もあって、北から北勢、津、伊賀、伊勢、紀南の5支部で構成され、支部ごとの活動を重視しています。5支部では県全域をカバーしている状況ではなく、空白地域をどう解消するかが課題ともなっています。
隣県から訪問客 ファンも増えて

紀南支部のみなさん。左から2人目が長澤会長
ここでは県の南端に位置する紀南支部の朝市などの活動を紹介します。紀南支部は熊野市、御浜町、紀宝町からなり、三重ブランドとして認定されている「南紀みかん」の産地です。
紀南支部の朝市は、30年ほど前に遡り、熊野市と紀宝町に挟まれた御浜町で三重農民連の山本隆一副会長の所有地にいくつかの建物を作り、そこを拠点に始めました。最初の3年ほどは11月に「収穫祭」と称して朝市を行っており、その後月1回(現在は第2日曜日)の開催となっています。会員は当初10戸ほど、ピーク時は15戸、現在は7戸で野菜、加工品など多彩な品目を出店しています。
売り上げは1回当たり5万円ほど、来客(購入者)は40人くらい。熊野市、御浜町、紀宝町を中心に隣県の和歌山県新宮市周辺からも訪れ、さらには県内各地からのファンとも言える固定客、通りすがりの県外者もいるようです。
朝市は、「いきいきふるさと産直センター」と称し、パン工房、農民連所有の「いっぷく庵」などを憩いの場とし、他団体の会議などにも貸し出しています。
野菜、米、みかん、手作りパン、すし、近隣の漁港からの魚の出張販売、加工品など所狭しと並べられ、朝9時から昼前までの間、売るだけではなく消費者との会話も弾み、地域の人々の交流の場ともなっています。新日本婦人の会との間でミカン産直も長年続けています。
給食無償化後も問題解決に奔走
4月の朝市には伊勢支部も野菜や花をもって参加し、終了後手作り太巻きを昼食として交流会を行っています。農家、消費者、朝市ファン、町議会議員、介護施設の方など多彩な顔ぶれで、人口の減少が進む山間地域という条件のなかで食と農にとどまらず、生活や教育、地域で抱える問題などにも及び話題は尽きません。
中にはアレルギー体質の子どもさんをもつ若いお母さんたちも熱心に加わっています。御浜町周辺はすでに学教給食の無償化がなされていますが、例えばアレルギー体質によって弁当を持参している子ども、またいじめや不登校などで隣の町から通学する子どもは無償化の対象となっていません。この現状に対して教育委員会交渉を通じて対象とすること、さらにはタブレット配布による教育について、電磁波過敏症やタブレットの教育効果に対する疑念などを町や学校当局に訴えるなどの活動をしています。
給食無償化を実現してもなお問題は残され、実情に即して取り組む若いお母さんとそのグループの存在はとても輝いています。もとより参加者の高齢化が進み、朝市の若い継承者の確保は喫緊の課題となっています。
このように紀南支部の朝市は、直売を基礎に地域の様々な問題に関わって交流・発信の場となっています。過疎化が進む困難を抱えつつ地域コミュニティーの拠点としての役割を果たしており、若い層も引きつける魅力ある場として、今後の持続的発展をめざして県連と各支部との連携を強化していきたいと考えています。