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6生協が改定基本法の学習会 不十分な点残る改定(2024年11月18日 第1626号)

基本計画に私たちの声の反映を

(右上から時計回りに)風間、安藤、山口、高橋、宮北、萩原、薬師寺、大信の各氏

 「食料・農業・農村基本法改正に伴う学習会」が10月11日、オンラインで開催され、530人が視聴しました。主催は、生活クラブ事業連合生活協同組合連合会、東都生活協同組合、生活協同組合連合会コープ自然派事業連合、生活協同組合連合会アイチョイス、グリーンコープ生活協同組合連合会、パルシステム生活協同組合連合会の6生協。

上からの改定 期待感はなし

 開会のあいさつを東都生協の風間与司治理事長が行い、「基本法が改定されたが不十分な点が残されている。基本計画に私たちの意見を反映させ、実効性をもたせる必要がある」と述べました。
 東京大学大学院農学生命科学研究科の安藤光義教授が「『食料・農業・農村基本法』と今後の課題―見直しの経過にみる問題点と今後の政策の方向性―」のテーマで基調講演。
 今回の基本法見直しの経過について「すでに敷かれたレール上を進んでいるだけ」「生産者を支える直接支払制度など新機軸もなく、期待感はない」と評価しました。
 改正基本法の問題点として、(1)今回のキーワードは食料安全保障だが、基本理念には核となる哲学がなく、既存の政策を束ねただけ(2)食料安全保障につながらない「輸出促進」を盛り込んだため、食料政策分野がいびつに突出(3)有機農業が農業政策ではなく環境政策に区分された(4)多面的機能の発揮と農村振興をつなぐ政策が不十分―の4点を指摘しました。
 安藤教授は改正法の狙いを「上からの技術革新」と表現し、農業者を資本に包摂し、農業の食品産業化を進めた具体的な姿が「輸出促進」「輸出産地の形成」だとしました。
 改正法に「農業の自然循環機能の維持・増進」「地域社会の維持」が盛り込まれたことにもふれ、集落営農による地域社会の維持や自然循環機能を生かした農法の根本的な刷新など、生産現場から政策を積み上げて農村の総合的な将来像を示していくことの重要性を強調しました。

米や畜産・酪農 農政の転換図れ

 生産者からは「今の農業現場の状況と必要なこと」として4人が発言。米生産者の山口勉さん(栃木県那須塩原市)は、新しく成立した食料供給困難事態対策法について、「罰金付きで強制的に作らせるのはおかしい。戦前を繰り返すのか」と批判しました。来年の米価に対する不安を語り、後継者が育つためにも農業でやっていけるような支援が必要だとしました。
 東都生協産直生産者団体協議会会長で千葉北部酪農農業協同組合の高橋憲二代表理事が、いすみ市の高秀牧場の現状を報告。乳牛200頭とともにトウモロコシや稲など飼料用作物の取り組みを紹介するとともに、高齢化と急減が進み、米づくり時給10円、深刻な酪農の赤字経営という衝撃的な現状を述べ、農産物の適正な価格形成、持続可能な農業生産など農政の転換を求めました。
 北海道北広島市の宮北牧場代表の宮北輝さんは、国産飼料で肉牛経営を営み、繁殖・育成牧場として、アンガス牛の普及に役割を果たしてきた成果を披露。今後の畜産政策として、黒毛和牛に偏った政策や補助金の見直し、自給飼料生産に取り組む農家への支援を訴えました。
 長野県佐久穂町の、のらくら農場代表の萩原紀行さんは、年間50~60品目を栽培し、土壌の数値化、栽培理論の共有化などの実践を報告。中山間地で営農することで、労働人口激減への対処、地域のリーダーの廃業など乗り越えるべき課題をあげました。

生産者とともに農業に関わる

 消費者を代表して「グリーンコープ生活協同組合おおいた」理事長の薬師寺ひろみさんが発言。下郷農協を通じて、消費者が生産者とともに農業に関わることや規格外品を正規の作物と同等の価格で購入するなどの取り組みを行っていると語り、「第1次産業は宝。国がもっと支援を」と訴えました。
 閉会のあいさつをパルシステム生活協同組合連合会の大信政一理事長が行い、「食料自給率目標や食の安全の問題など、基本計画に私たちの声を反映させる学習をこれからも大いに取り組もう」と呼びかけました。