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食と農・高まる関心 安心・安全な学校給食進めたい(2024年12月16日 第1630号)

熊本県農民連会長 笹渕 賢吾

食と農の分科会で報告する笹渕会長

 私は熊本県和水(なごみ)町の水田で2ヘクタールの無農薬栽培をしていますが、今年は地球沸騰化時代の高温が続き、農作物の栽培は難しくなり、生産量は減少し質も落ちています。熊本県農民連は20数年前から農と食を守る運動として減農薬栽培を基本に新日本婦人の会や病院と米の産直を行ってきました。

母親大会分科会 米と農業を語る

 政府による減反政策の強化は米不足の状況を生み出し、今年は1俵(60キロ)2万2千円から2万5千円とこれまでより大幅に価格がアップしました。コロナ禍で採算がとれない暴落が続き、大幅アップはうれしいのですが、消費者にとって物価高騰は暮らしが厳しくなり、賃金アップは必須です。
 昨年に引き続き今年も、9月23日に行われた熊本母親大会の食と農の分科会で「有機農業の推進と安全な農産物を学校給食へ」と「スーパーからコメが消えた。なぜコメ不足?農業はどうなっているのか」等、農業の実態、農村の状況などの話をしました。今年は昨年より倍以上の参加があり、真剣な意見が出され交流が深まりましたが、米の価格高騰は多くの消費者の農業に対する関心を高めているように思います。
 2022年に「みどりの食料システム戦略法」が成立し、全国各地で安全安心な有機農産物の生産が推進されています。和水町でも有機農業等推進協議会が結成され、活動が始まっています。農家とJA、県、町の農業・学校給食に関係するメンバーで構成しています。農民連会員も入り、研修に参加して学んでいます。

有機農業推進協 町民からも注目

 11月に山間地の宮崎県綾町で研修しましたが、町が中心となり有機農業に力を入れていました。50年前から有機農業を推進する方針を確立して無農薬の米や野菜が直売所で販売され、地域の人は日常的に購人して安全な
ものを食べるという生
活が日常になっています。
 町事業として農業機械を購人し希望者に貸し出し、移住者は機械購入をしなくても農業が始められ、新規就農者は町のオーガニックスクールで農作業を2年間学び、土壌検査も町が行って畑の状態を把握しながら施肥設計を行っています。
 和水町では、高齢化で農家の減少や耕作放棄地が増えて、町内の20代の農業後継者は3人になっています。町有機農業等推進協議会が設立されたことから、有機農業が町民から注目されています。
 小さな子どもを持つお母さんは、「子どもに安全なものを食べさせたい」という思いが強く「学校給食にオーガニックの安全な農産物を使ってほしい」と声を寄せています。その声に応える活動を農家と行政、消費者の皆さんと進めていきたいと思います。
 (熊本県農民連会長 笹渕賢吾)


第62回摂大セミナー
農と食のおいしい未来のために

日時 12月21日(土)午後1時30分~3時30分
会場 摂南大学枚方キャンパス8号館3階
   8306教室(オンラインあり)
講演
「食と農をつなぐ料理人が見た、農業のリアルと食の選択について」石井佳奈さん(フードセンターイワセ代表)
「有機農家の現状と、畑から見える環境問題」高橋範行さん(高橋農園・紀の川農協理事)
 オンラインで視聴するには事前申し込みが必要です。https://forms.office.com/r/eVYUFrnKTmまたは下記の2次元コードから