アイコン 新聞「農民」

農業・畜産危機打開へ交流 全国開拓振興協会講演会 長谷川会長と鈴木教授が講演(2024年12月16日 第1630号)

講演する長谷川会長

 11月19日、島根県松江市で全国開拓振興協会主催「日本の“農”講演会2024in島根」が開催され、農民連の長谷川敏郎会長と東京大学の鈴木宣弘特任教授が講演しました。終戦で海外から引き揚げ、現在畜産・酪農中心の開拓農民は、今も2世・3世・4世のみなさんが頑張っています。今回は、北海道から鹿児島まで一般も含めて120人が集いました。

危機打開のため農政を変えよう

 農業・畜産危機が深刻な中で、どうしたら現状を打開できるかと農家同士で交流を深めました。
 鈴木宣弘教授は講演で「農民連も頑張っているからみんな(開拓連)も協力して一緒に頑張ろう」と激励と連帯を呼びかけました。
 長谷川会長は、「総選挙で自給率向上、農政転換の政策を打ち出した野党が議席を伸ばした。いまこそ農政転換を切り開くチャンス」と述べ、「規模拡大路線からの転換、家族農業を支援し、アグロエコロジーの実践が危機を打開する道だ」と、実践報告も含めて展望を示しました。
 参加者からは「国産牛乳は捨てられているのに、粉ミルクは輸入であるのをどうにかしてほしい」との声や、「農民連の提案は大事だと思うが、今の酪農経営危機の中では将来のことより、明日のこと、家族や従業員をどう食わせていくのか不安」と切実な声も。

一次産業の振興 所得補償が必要

 三瓶開拓農協・西谷会長が感想
 講演会を終えて、主催団体のひとつ、三瓶開拓農協の西谷悟郎会長は、次の感想を寄せました。

 長谷川会長は、農基法の時、参考人として国会で発言した。現役の農家としての発言は、立場を問わず共感した人も多かったため、今回の講演会が実現した。戦後ゼロからスタートした開拓農民は、日本の食料供給を担ってきた。
 今、酪農・畜産はかなり厳しくて不採算が続いている。生産原価が上がっているのに、販売価格が下がる。規模拡大・投資した人は、風前の灯で、とにかく自力ではどうにもならない。廃業したくても家畜も土地も建物も売れない状況だ。
 長谷川会長や鈴木先生の講演で、ほとんどの政党が、政策では『農業支援』と言っていると紹介されたが、現実はそうなっていない。後継者がいない、地方創生が必要と言うけど、一次産業で食べていけないのに地方に人が来るわけないし、既存の農家が廃業しているのに新規でやる人が増えるわけがない。国防だ、軍拡だというなら、食を供給する一次産業が、家族を養えて、将来の生活が見通せるように、農家への所得補償が一番大切だと思った。