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米は国が責任もって管理を グリーンウエーブ集結行動 自給率向上は地域の要求(2025年01月13日 第1633号)

田んぼの多面的機能守るため税金投入する仕組みが必要
食健連

(左から)小松さんとパネリストの平野さん、小倉さん、野地さん、菅原さん

 全国食健連(国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会)は2024年12月18日、都内で「秋のグリーンウエーブ集結行動」を開催しました。
 全国一斉共同行動のグリーンウエーブ行動で集めた各地の声を持ち寄り、農水省要請、シンポジウム、収穫祭に取り組みました。
 農水省要請の冒頭、全国食健連代表幹事の信川幸之助さん(全農協労連執行委員長、千葉県農民連事務局)が主催者あいさつ。「私たちは今回の行動で、政府への要請として『食料・農業・農村基本計画』に食料自給率の目標と達成するための計画を明記することなど、4点を掲げた。その要請に対して自治体23、農協29、団体299の計351から賛同書をもらってきたので、受け取って声を聞いてもらいたい」と述べました。
 岩手県農協労組執行委員長の櫻田真一さんは、「県内すべての自治体、農協と懇談し、全7農協と17自治体(県内33自治体)が賛同してくれた。地域の声として『自給率向上が求められている』という証です」と強調。24年夏からの米問題について、「米の価格は高騰状態が続き、消費者には大変な思いをさせ、生産者は『ようやくまともな買取価格になってきた』との声がある。国民の食料の安定供給のために、後継者問題など国をあげて早急な対策が必要」と訴えました。

米の安定供給に国は役割果たせ

 庄内産直センターの小林隆範代表理事も米の問題について言及。「国が都道府県に出している『生産の目安』をもとに各農家は米の作付量を決めている。私たちも要請に応えないと県育成品種の種が買えないなど、実質『規制』の状態だから協力している。しかし国は『あくまでも目安であり、地域ごとの判断で』と言う。国がきちんと責任を持って生産の管理をするべきではないか」と農水省を質しました。
 新日本婦人の会の浅井まり中央常任委員は消費者の立場から、「主食の米が安定供給され、価格の乱高下がないように、国として役割を果たしてほしい。『今日いただいた意見は基本計画の中身の検討に生かす』という発言を真剣に実行してください」と訴えました。

自給率の向上へ米生産の拡大を

 シンポジウムでは『「米不足」から持続可能な食と社会を考える』と題して、岡山大学名誉教授の小松泰信さんのミニ講演と、農家、消費者、生協と農協職員によるパネルディスカッションが行われました。
 小松さんは「米の生産の在り方を今後盤石なものにするために」として、農水省発表の最新版「食料消費の構造と食料自給率」グラフを用いて解説。海外からのエサによる畜産生産を国産飼料米に切り替えて自給率を上げ、わずか4%という油脂類の自給率を上げるために米油の生産を拡大するなどの案を示し、「これらによって田んぼを維持し、洪水防止や景観保全などの多面的機能の創出を農家に担ってもらう。その恩恵を受ける国民の税金から農家を守るお金を出す、という仕組みが必要です」と提起しました。
 パネルディスカッションは小松さんと4人の登壇者で行われ、主婦連合会常任幹事の平野祐子さんは「令和の米騒動」について、「価格が高値になっても消費者が買い支えよ、というのは無理がある。やっぱりこれは政治の問題ではないか」と述べました。

次世代に食の安心つなげたい

 東都生協専務理事の野地浩和さんは米騒動が起きた24年9月以降、東都生協での米の注文が増大したことについて、「何とか欠品を出さずに対応できたのは、産地と組合員が近い立場で食と農に向き合ってきた信頼関係が大きいのではないか。農業の現状を理解して、組合員一人ひとりが関わることで次世代へ、食の安心をつなげていける取り組みを強めたい」と展望を語りました。
 山形農協労庄内分会長の菅原剛さんは地域の営農指導員、米検査員として令和6年産米について「いろいろ考えさせられた」と述べました。集荷業者が生産者を訪れ直接買い取ることで農協の集荷量が減少、指導員として春から指導してきた米が農協に出荷されない悔しさ、農協の役割とは何なのかを自問。その上で、「持続可能な食と社会に向けて、国が主導して再生産可能な適正価格を実現することを前提に、地域の共益に向けて農協も取り組みたい」と抱負を述べました。

消費行動が政治変え日本変える

 千葉県の米農家で農民連副会長の小倉毅さんは「県内有数の大規模米農家が機械などの高騰の中で『とにかく先が見えない』と話している。日本は食料危機の状態にあることを本気で考えてほしい」と危機感を表明。「その中でもアグロエコロジーという環境に配慮した循環型農業に基づいた食料生産が注目されている。一人ひとりの消費行動が政治を変え、日本を変えるという視点も大切にしたい」と語りました。
 収穫祭では千葉県農民連が用意した、おこわや煮もの、太巻などと新潟や各地から持ち寄られたお酒を味わいながら交流し、労をねぎらい合いました。