国は中山間地の農業守れ! 島根県吉賀町 トラクターデモ 農家約40人トラクター22台(2025年01月27日 第1635号)
食料なければ国も民も守れない!

「申し上げたいことは山ほどありますが、私たちは中山間地域で農畜産業を営む農業者として、国民の食を支えているという自負があります」――。2024年12月18日、島根県吉賀(よしか)町で行われたトラクターデモに合わせて発信された声明文の冒頭部分です。デモ呼びかけ人の斎藤一栄(いつえ)さんに話を聞きました。

トラクターデモは吉賀町農政会議のメンバー、農家約40人によって行われ、トラクター22台や軽トラックなどで町内約3キロメートルを行進しました。
町農政会議の会長で、今回のデモを呼びかけた斎藤さんは、「私たちはとにかく『中山間地の農業を守る』ことをやらないといけないと思って行動した」と強調。
20年発表の「農業センサス」によると基幹的農業従事者の全国平均年齢は67・8歳で高齢化が加速するなか、中国地方の同平均年齢は更に高い71・8歳です。斎藤さんは、「うちの集落でも74歳の私が“若手”。80歳なかばでがんばっている人たちのほうが多い」と話します。
適正価格実現は国の役割が必要

デモ集結地点の町庁舎前で演説する斎藤さん
斎藤さんは中山間地の農業を守るために、「何より国がその役割を果たさないといけない」と語気を強めます。「米の問題も酪農の問題も、国の農業政策が問題なのです。米の値段については、消費者米価が上がりましたが、生産者米価としてはまだ資材費高騰を完全にカバーできてはいません。しかし消費者から見ると『農家はもうかっている』と感じられ、これが続けば生産者と消費者がケンカをしてしまう。だから『消費者に適正価格を負担してもらう』のではなく、生産者には再生産できて持続可能な価格を保障し、消費者には誰でも買える価格で売る、という国の役割が必要です」
都市部に出向いてアピールするのではなく、まず自分たちの地域の消費者に現状を知らせ理解してもらおうと、斎藤さんが「主意書」を持って農家まわりをすると、皆さん「よっしゃ!やろう!」と賛同してくれました。
上流守らないと農業は守れない
人口減少が進む日本ですが、世界では逆に人口が増え続けていることも斎藤さんの危機感を強めています。「増大する需要に対して、世界の耕地が劇的に増えることはありません。いつまでも輸入に頼ることはできない。国内で食べるものを国内でつくる“国消国産”に早く切り替えないといけない。中山間地、つまり上流の農業を守らないと日本の農業は守れません。上流の田畑がダメになれば、平地の農業に必ず影響します」
吉賀町は子育て支援の充実に力を入れています。子ども医療費の全額助成や学校給食費・保育料の完全無償化を実施し、財源確保のために町営の小水力発電で得た収益の一部を一般会計に繰り出しています。合併前の旧柿木(かきのき)村地域は、90年代から有機農業や減農薬栽培に地域ぐるみで取り組んできました。
そんな吉賀町にあっても農業の衰退、耕作放棄地の増大は「本当に大変な事態」と斎藤さん。「自分たちの地域でやれることは、もちろんやっていきます。しかし自治体ごとの努力ではどうしようもないところまで来ています。国を動かすために地域から盛り上げたい、というのが今回のトラクターデモです」
子どもたちの声がうれしかった

子どもたちも大きなトラクターに大興奮!
デモの時間が地元の保育園の「お昼寝」時間と重なるため、事前に園に知らせたところ、当日、子どもたちが園の前で旗をふって応援してくれました。「私たちもビックリして。でもうれしかったですね。消費者に理解してもらい、皆で声をあげていきたい。だって食べない人はいないんですから。これを県全体、全国に広げていきたいです」