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水活 水田活用直接支払い交付金 「5年に1回」の水張り廃止へ(2025年02月24日 第1639号)

農家の怒りと運動が改悪押し返す 農水省 2027年度以降の要件を見直し
自給率向上へ運動さらに

 政府は1月31日、「水田活用の直接支払い交付金(水活)」の要件見直しの方向性を発表し、江藤農水大臣も、同日の衆院予算委員会で「2027年度以降、交付要件の水張りは求めない」と明言しました。25年と26年も連作障害回避の取り組みを条件に水張りなしでも交付対象となります。
 水活は国による米の転作・減反政策のもと、水田を麦・大豆・飼料用作物などに転作した場合に10アールあたり3万5千円を交付するなどの支援を行うもの。
 ところが政府は2022年度から突然、5年に1度、水稲の作付けがなく、水張りを行っていない水田を交付金の対象から外す見直しを行ってきました。
 2年以上たった現在、牧草転作組合などが解散に追い込まれ、ソバなどの転作を断念した地域もあります。また、水張りのために、資金をかけて畦を作ったり、ほ場を修繕するなど、農家に大混乱をもたらしてきました。
 並行して実施されたのが「畑地化促進事業」。水田を畑地化すれば一定の交付金をまとめて交付する制度。毎年払う交付金を打ち切るための「手切れ金」です。
 23年度の交付額は1万4419件、交付額は520億円。対象面積は3万ヘクタールで、この間に3万ヘクタールの水田が失われたことになります。
 農民連は一貫して反対し、水活の充実を求めてきました。
 多くの地方議会では、水活見直しの中止・撤回を求める意見書が採択されるなど、怒りが広がりました。

詳細はまだ不明 注視の必要あり

 今回の見直しの詳細はまだ不明なところもありますが、運動で政府を動かしたことは間違いありません。
 今回の見直しは、昨年11月、食料自給率向上に背を向け、飼料用米への助成廃止など、農業予算削減を打ち出した財務省の「財政制度等審議会」の「建議」に沿った「米政策」と連動しています。今後の動向を注視する必要があります。
 「令和の米騒動」で国民をパニックに追い込んだ米不足を繰り返さないためにも、水田機能を維持して“米危機”を打開し、食料自給率を向上させる施策を求める運動を強めましょう。

水路や畔直した農家も多いのに…
今までの努力はどうなる!?
北海道当別町 堀 比佐志さん

「水田活用交付金見直し」の見直しを求める町民の会設立準備会=2022年4月11日、北海道当別町

 北海道当別町では22年4月、「水田活用交付金見直し」の見直しを求める町民の会が結成されました。町議会では、全会一致で見直しに反対する意見書が採択されました。
 同町の堀比登志さん(65)は、約37ヘクタールで小麦を作っています。「米が余っているからと、国の言う転作で生産調整に協力し、農地集積せよと言われて、畔がない農地も借りて耕作してきた。22年の見直し当時は、国は転作政策を進めておいて、いまさら何を言い出すのかと憤慨したが、10アールあたり3万5千円の交付金は大きい。水路や畔を整地し、水を入れたりと段取りをしている農家もたくさんいる。今回の見直しで、水張りを要件としないということになったのは喜ばしいが、これまでの努力はどうなるのか」と怒りを隠しません。