自分が手をかけ、工夫した成果が見えるのが楽しい もうけよりおいしいものを作る生産者でありたい(2025年03月03日 第1640号)
露地で水ナスとブロッコリー生産 大阪 就農5年目 貝塚市 奥野 壮人(まさと)さん(27)

「会社のために人の指示で働くよりも、家族のために自分で考えて働く農家の方が性に合っていました」
そう話すのは、新規就農5年目で、大阪府貝塚市で約30アールの露地野菜を作る奥野壮人さん(27)です。夏は泉州特産の水ナスを10アール、冬はブロッコリーを20アールほど作付けしています。
家は農家で、農業は身近にありました。営業職を退職し、父とは独立して就農を決意します。「家族経営は結構、家族間でケンカになります。それよりはお互い独立して、忙しい時には手伝い合う関係の方が良いと思いました。今は父の玉ねぎを手伝ったり、水ナスの支柱建てを手伝ってもらったりと、いい距離感ではないでしょうか」
退職後、農業大学校に行かずに就農した奥野さん。「水ナスは名産なので、師匠となる人が地域に多くいました。名産を継承して残していく必要も感じていたので、選びました」と話します。
「水ナスは普通のナスビとは全く違う」といいます。ほぼ全量を漬物屋さんに出荷しています。
冬はブロッコリーを作付けしています。「山場では気候が合い、害虫や病気の発生が少ないので、2回の防除で済むこともあり、中生(なかて)と晩生(おくて)の2種類を植えています。少しでも薬品を使用料を減らせるようこまめに観察して、予防の段階で手を打つようにしています」
晩生の品種は気温と施肥量の調整が難しく「昨シーズンの気温を参考に肥料をまいたのですが、うまくいきませんでした」と振り返ります。
「今年は晩生のブロッコリーの代わりにイチゴに挑戦してみようと思っています」と奥野さん。収穫時期が水ナスの植え付けと重なりますが、挑戦を始めます。
「果菜類は手間をかけて観察し、受精や花の様子から施肥を変えるなど、考えてやれるのが楽しいです」と奥野さんは意欲を見せています。
3年前に加入した農民連との出会いは、税金申告の学習会でした。「父の出荷しているグループの申告時に竹島茂直さん(奈良県連副会長)が来て知り合いになり、大阪で開催されたなんでも学習会にも参加しました」
翌年からはブロッコリーも農民連大阪産直センターに出荷し始めます。「税金のことを聞ける人がいなかったのでとてもありがたく、3年間学習会に通って自分で申告書を作り上げることができるようになりました。農民連の記帳簿は重宝しており『神アイテム』だと思っています。ブロッコリーも直売所がお客の取り合い状態で、大量に出荷でき、うちまで取りに来てくれるので本当に助かっています」と感謝しています。
「値段よりもおいしいものを作りたい。経営者ではなく生産者であり続けたい」と話していました。