農家のための税金コーナー 消費税申告の注意点(2025年03月17日 第1642号)
消費税の申告期限は、3月31日です。それまで申告は何度でも修正できます。所得税と同様に、災害の影響で期限までに申告ができない場合は、状況が落ち着いてから所轄税務署長に「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を提出し、期限の延長を受けることができます。
被災により事務処理の負担軽減が必要な場合や、被災で緊急の設備投資が必要となり、本則に戻したい場合などは、「災害等による消費税簡易課税制度選択(不適用)届出に係る特例承認申請書」を「消費税簡易課税制度選択(不適用)届出書」と同時に出すことで被災した年から、簡易課税の適用あるいは不適用となります。
あらためて消費税申告の注意点を紹介します。
「委託販売手数料」を引く
消費税法基本通達10―1―12により、販売金額から委託販売手数料を差し引いた金額で課税売上高を算出できます(純額処理)。
しかし、2019年10月の複数税率導入に伴い、軽減税率(8%)となる商品は委託販売手数料(10%)と税率が違うため、差し引くことができなくなりました。
この場合の販売金額は、委託販売手数料等を引く前の金額で計上しましょう(総額処理)。振込金額とは異なるので農協・市場に販売金額の確認が必要です。
「委託販売手数料」を差し引ける農畜産物
宮崎県農民連で「委託販売手数料」を差し引くことが確認できている農畜産物は、生体で出荷している子牛・成牛・花きくらいです。
消費税10%で、委託販売手数料がある農畜産物は、消費税を計算する際に、売上高より「委託販売手数料」を差し引いて計算しましょう。
「消費税率」の注意点
畜産物の売り上げで注意してほしいことは、生物です。生きて出荷すれば消費税は10%です。しかし、と畜後に価格が決まる畜産物は、8%(軽減)となります。また、牛などの皮については10%となります。
経費で注意する点は、賃借料(リース)です。農機具や畜舎などは、契約した時点の消費税が適用されている場合がありますので、気を付けましょう。増税前の消費税8%(国税6・3%)が適用されている場合は、軽減税率の8%(国税6・24%)で計算しないようにしましょう。
本則課税は、消費税率ごとに、しっかり区分しましょう。また、本年中に増えた償却資産は忘れずに計上しましょう。
簡易課税は、表を参照して委託販売手数料の差し引きとみなし仕入率を確認しましょう。
仕入税額控除にはインボイスが必要
本則課税の仕入税額控除にはインボイスが必要になります。経過措置で、インボイスのない仕入れは8割までが仕入税額控除をできます(26年9月30日まで)。簡易課税の場合はインボイスの有無は課税額の計算に影響しません。
インボイス関連でいくつかの特例があります。(『税金対策の手引き』71ページ)
免税事業者がインボイス登録と同時になった場合は、本則課税にも2割特例が適用でき、売上消費税額の2割のみの納付で済みます(通常の仕入税額控除も可能)。
課税売上高が1億円以下の人は、1回の取引は1万円以下のものはインボイスなしでも仕入税額控除ができます。
3万円以下の公共交通機関(船舶、バス、鉄道)や自動販売機での購入、ポストに投函した郵便代はインボイスなしで仕入税額控除ができます。
