農民連とふるさとネット、新婦人 農水省に要請
トランプ関税 輸入拡大圧力を拒否し、米不足と価格高騰の解消を 増産し備蓄水準を引き上げよ

要請書を手渡す(右から)浅井さん、長谷川さん
農民連と農民連ふるさとネットワーク、新日本婦人の会は4月23日、農水省に対し「トランプ関税」圧力を拒否し、米不足と価格高騰の解消めざす農業政策への転換を求める緊急要請を行いました。
参加者は、(1)日米関税協議で、米・乳製品を含めた農産物の関税引き下げ圧力を断固として拒否すること、(2)財務省によるMA(ミニマムアクセス)輸入米の主食化要求を拒否するとともに、将来にわたって米不足を解消するために、米の増産に踏み出し、国産米の需給と供給に国が責任を負うこと、米の備蓄水準を200万トン程度に引き上げること--を求めました。
冒頭、農民連の長谷川敏郎会長は「連日報道されているアメリカからの『米の輸入』拡大要求は断固拒否し、農業の危機的影響を回避すること。農家が作付けを増やし、国産米を増産しようと思えるように農水省は責任ある対応を。国民が安心できるよう備蓄米の供給を増やし、備蓄水準の引き上げが必要だ」と強く求めました。
農水省は、「トランプ関税は、貿易赤字解消が目的というが、アメリカの対日農産物貿易は黒字なので交渉の話題に農産物が上がること自体がおかしい話。数字も報道されているが事実ではない。米側も報道も言うことがコロコロと変わるので信用しないでほしい」と答弁しました。
農民連の笹渡義夫副会長は、「アメリカは日本に農産物の市場開放を要求しているのは事実ではないか。WTO(世界貿易機関)条約・日米貿易協定違反であり、極めて不当だ。国民が不安を感じ、憶測で報道するのは、政府が不当な要求をキッパリ拒否しないからではないか。『アメリカの要求には断固とした態度をとる』と改めて明言を」と要求しました。
藤原麻子事務局長は、「アメリカは農産物に10%の追加関税を課しているが、日本は日米貿易協定での牛肉などの段階的関税引き下げを粛々と進めている。政府が毅然とした対応をとらないため、農産物の輸入拡大の懸念が広がっている」と強調。農水省は、アメリカの要求は、WTO条約・日米貿易協定に違反する議論になっていることを認めました。
米の増産と政府備蓄米の水準引き上げについて、農水省は「放出で備蓄米の量が減ることは事実。備蓄米の拡大は金がかかるから国民から理解されない」と答弁。藤原事務局長は、「大軍拡でミサイルや武器を爆買いするより、食料の備蓄の方がよっぽど国民は求めている」と訴えました。
学校給食などに備蓄米の供給を
さらに参加者は、価格高騰と米不足で仕入れと調達が困難になっている学校給食、医療・福祉施設等への政府備蓄米の直接供給を緊急に行うこと、子ども食堂やフードバンクへの備蓄米無償交付の量・条件をさらに拡大することを要請しました。
新日本婦人の会の浅井まり中央常任委員は、備蓄米を学校給食に届けるための具体的手立てを要請。「現場では、米価高騰と品薄で入手できていない。ある自治体では学校が入手できず、市長が謝罪に歩いている。農水省は『米飯給食』を促進してきたわけだから、まずは学校給食会などに急いで届ける手立てを」と強く求めました。
時代遅れ、輸入依存の財務省
このような米需給に赤信号が点灯している下で、財務省は4月15日の財政制度等審議会財政制度分科会で、SBS枠増・MA(ミニマム・アクセス)米の主食用活用などを提言しました。
農水予算を削減したい財務省は、MA米を飼料用などで安く販売して発生する「MA赤字」を問題視してきました。消費者が米不足解消の見通しがみえず、このままでは国産米が食べられなくなるのではないかと不安を募らせていることに便乗し、農水予算を縮小する絶好の機会と提言したものです。
さらに財務省は、MA米の主食化で、国産備蓄米にはない需給調整機能を持たせることにまで言及しています。つまり、低米価状態を外米で作り出せと言っているのであり、断じて許せるものではありません。
国産米需要へり米価下落に直結
「1家族1袋まで」「3キログラム袋で販売」「お得意さん以外販売中止」など、お米屋さんやスーパー、生協などでの販売制限が実施されています。昨年同時期にはまだここまでにはなっていませんでした。
これほどの販売量制限を実施せざるをえない米不足・価格高騰のもとで、1キロ当たり341円の関税を払って輸入しても、十分利益が確保できることから、今年の夏に向けて中外食産業を中心に、外国産米の関税輸入が進んでいます。
米価格引き下げを期待して、外米輸入の拡大を歓迎するマスコミ報道も強くなってきます。
しかし、国内産米の不足を補う形で、外米が定着してしまえば、国内産米の需要が減り、新たな米価下落と生産増への道を閉ざすことに直結します。
外米輸入拡大は不安定化強める
また、外米の主食用需要が固定化されれば、輸出国での豊凶・価格変動が国内市場の価格と需給に直接影響を及ぼすことになり、主食である米の生産・流通・消費がさらに不安定化を強めることになります。
今年産米の作柄いかんでは、外米頼みになる事態も想定されるのが、現在の米不足の深刻さです。そのような状況であるからこそ、学校や保育所給食、病院などへの備蓄米直接供給、子ども食堂・フードバンクへの無償交付の拡充など緊急の手立てを取ることが求められます。
減産から増産への道筋を示す政策と予算、政治への転換は待ったなしです。