アイコン 新聞「農民」

旬の味(2025年05月19日 第1650号)

 農の道で生かしてもらい44年という時を過ごしてきました。時の経過とともに農を取り巻く状況も大きく変わりました。衝撃的だったのは福島原発事故でした▼仲間の方たちと種をまいてよいのか、収穫した農産物はどうなるのかと話し合い、とにかく検査する、そして安全を確認し食べていただく。その繰り返しの中で食べてくださるみなさんと生産する農民がつながることの大切さを学ばせていただいた日々でした▼同時に土とともに生きてきた方たちがその土地で耕すことができなくなったことへの衝撃を痛感した日々でもありました。「べこの堆肥を入れ続け育てた土が黒い袋の中に入れられてしまった」とつぶやかれた方の言葉が刺さったままです▼老朽原発の稼働を止めるべきと活動していた知人から事故直後「避難しないんですか」と連絡をもらい、耕し続けてきたこの田んぼ、畑を置いて逃げられないと感じた時から14年、農を取り巻く状況は大きく転換しようとしている時代。前を向いて耕し続けたいです。(蛙)