能登半島の地震・水害 農家の被災実態を聴き取り 全国災対連 復旧より万博優先 おかしい 見捨てられているようだ!(2025年06月09日 第1653号)
5月16日に災害被災者支援と災害対策改善を求める全国連絡会(全国災対連)が行った能登地震と水害の被害調査で、石川県輪島市内の2人の農家から現状を聞きました。その内容を紹介します。
輪島での住宅再建に厳しさ
地震で崩れた用水路の復旧早く
輪島市小伊勢町の稲作農家
稲本 博明さん(66)
輪島診療所の近くの橋のそばに住んでいます。地震で家は全壊していましたが、大雨でプール状態に。地震で壊れた家からやっと運び出したものが洪水でダメになってしまいました。今は公民館近くの仮設住宅に入居しています。
地震後には同じ場所で住宅の再建を考えていましたが、豪雨で2メートルも浸水しました。輪島で土地を新たに求めて住宅を建てるとなると、金沢で買った方が安いのではないでしょうか。ハウスメーカーに相談しても「輪島には行けない」「輪島なので追加料金300万円(当初は150万円だったが最近倍に)」と言われてしまうので再建は難しい状況です。しかし、復興公営住宅の案内が最近来ましたが、家賃負担も大変です。
ため池も壊れ雨頼みの再開

大量の岩や流木が残る田んぼ(輪島市)
田んぼは地震で水路が崩れ、水害で流木や土砂流入を受けています。ため池も地震で壊れ、水を貯められなくなっています。「田植えはできる人はしてください」と言われ、山から流れてくる雨水でできるところだけやろうとしたところ、5月の連休に、排水路が埋まっていることが判明しました。急ぎ5月2、3日にボランティアさんに入ってもらい排水路の泥出しを行いました。去年から作付けしている2人と合わせ4人でほんの少しだけ作付けすることにしています。
川からの揚水ポンプも地震で壊れたので「仮設ポンプを設置します」と話がありました。しかし連休明けに見に来ましたが、まだ材料を発注していない状況で、本当に雨頼みです。
早くポンプを設置してもらって、用水のパイプができてほしい。県の農地等手づくり復旧支援事業があって、40万円未満ならできるとも言われ、聞けば教えてくれるのだろうけどあちこち被害があって、手が付けられていません。近所の住宅の排水がだめになっており、迂(う)回するパイプが用水路中に通されていて、水路として成り立たなくなってしまっています。
倒木が大雨で田んぼに流れ込む
震災復旧予定が大雨で中断
輪島市下黒川町の稲作農家
林平(はやしひら) 一守さん(72)
自宅は地震で全壊し、すぐ近くに住む弟の家に住んでいます。屋根瓦だけ直せば住める状態でしたが浄化槽の修理はまだ済んでいません。
震災当日の1日はめいっ子なども来ていて、家には16人がいました。今回は長いこと揺れが続き、こたつやテーブルの下に避難していました。いつ余震が来るかわからないと、集会所に避難しました。
集落38軒みんなが外に出てきていて、家がつぶれたのが3カ所で1人亡くなりました。少し離れたところにあるお宅では腰を打った住人がつぶれた家の下敷きになっており、同じ班の人が救出しました。しかし孤立状態で病院にも行けず、救急車も来たのは4~5日後。道路が寸断されていて田んぼの間や堤防を縫ってきました。
地震より水害で住むことを諦め
幸いだったのは日中であったことと、停電が短時間で済んで、暖をとるのに苦労しなかったことです。水道は5月末まで断水し、山水をホースで引いてしのいでいました。後になって、ペットボトルで持ってきてもらうこともできるようになりました。正月だったので食べ物は各家庭にあるものを持ち寄りました。
輪島市は避難している人も地震よりも水害で住むことをあきらめる人も多いのではないでしょうか。
私の集落38軒で、家に住んだり修理しているのは4軒、後の10軒は集落の仮設住宅に住み、ほかの人は転出しました。他も同じような状況ではないでしょうか。
田んぼも15ヘクタールありますが今年田植えする予定は1ヘクタールほど。5月10日頃にやっと泥出しが終わって、田植えもまだです。私も8枚ほど田んぼがあります。流木は去年11月20日ころまでに農道脇に撤去されましたが、砂・泥はそのままになっていて、あぜと田んぼの高さが同じになっています。
震災で河川をふさいだ流木を堤防上に撤去し、決壊した堤防に土のうを積むなど、とにかく川だけは流れるようにしてありました。しかし堤防に残された流木が大雨で流出し、田んぼに流れ込んできました。
地震の時には田んぼ自体は無事でしたが、水路の崩落で耕作できない状態にありました。一部の田んぼの隆起はありましたが、去年中に水路の修理をして、今年の作付けに間に合う計画で、地力増進作物として麦を植えて田んぼにすき込む予定でした。しかし水害ですべておじゃんになりました。
川からポンプで水をくみ上げていますが、水路は埋まったままです。ただ水の通り道だけは泥出しして開けたので、田んぼの一部は再開できています。再開した田んぼは水路が一部パイプになっていて、U字溝も割れているが段差はできても水が流れているのでかろうじてできました。
能登地方は主要道路が1本しかないのだから、万博の工事をやめて道路を早く復旧すべきでした。また建物の解体の期限を区切ってやるのはおかしいのではないでしょうか。能登の人口の自然減少を狙っている、見捨てられていると感じています。