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今回の米危機は政治災害 増産へ農業政策の転換を(2025年06月23日 第1655号)

6・11緊急農水省前行動から

 農民連が6月11日に開いた「政府は主食の米に責任を持て」緊急農水省前行動で長谷川敏郎会長が開会あいさつを行い、日本米穀商連合会の相川英一専務理事がメッセージを寄せました。全文を紹介します。

長谷川敏郎会長 開会あいさつから

訴える長谷川会長

 小泉農水大臣、さらに農水省のみなさん、国民の主食、米価格の安定のため、連日のご奮闘ご苦労様です。私たち農民連は昨年9月10日、この場所で「米価高騰を抑えるために直ちに備蓄米を放出せよ」と訴えました。新聞「農民」では去年の春先から米不足を指摘しました。当時、坂本大臣は新米が出れば落ち着くとウソを言いました。江藤大臣は流通の目詰まりだと犯人探しに奔走し、結局、3月に「備蓄米放出」と称して政府倉庫から備蓄米31万トンを民間に移動させただけです。

米危機の政治利用はやめろ

 政府は市場介入しないというルールは誤りです。その点で、小泉大臣は米価格の安定のためには政府が介入するべきだと実践しました。その通りです。主食である米の価格と需給の安定は国の責任です。
 今回の事態は、1993年のような大凶作や大災害があったわけではありません。政府と農水省による22年産からの減反の強化と需要見通しの大幅な見誤りから、深刻な米不足が発生しました。まさにこれは政治災害です。小泉大臣は与党の一員として、この失敗をまず認めるべきです。自らの政権の失敗で米高騰を引き起こし、その火消しの先頭に立っているからと言って、政治利用はやめてください。
 また、100万トン水準としてきた備蓄米在庫は激減し、小泉大臣はさらに備蓄米を放出するとしており、政府備蓄は空っぽになります。今年の米の作柄によっては、緊急輸入すら想定しなければならないかもしれない、そんな不安があります。
 惨事便乗・ショックドクトリンで備蓄米制度そのものを破壊することは許されません。早期に100万トンまでの回復の道筋を示すべきです。
 とりわけ、江藤前農水大臣が31万トン、小泉農相が30万トンプラス20万トンを市場に売り浴びせたわけです。今年の増産40万トンを含めて市場じゃぶじゃぶは農家の中に大きな不安が広がっています。小泉大臣は生産者に寄り添って、責任をもって対応すべきです。

このままだとまた過ち繰り返す

 いま、農村では、長年の低米価によって離農・廃業に歯止めがかからず、米の生産基盤が著しく衰退しています。米流通を支えてきた町の米屋さんが米の仕入れができず、休廃業を余儀なくされるという深刻な事態も広がっています。米不足と米価高騰による国民生活への圧迫は、長期にわたる諸物価高騰による生活苦が続く中、さらに深刻度を増しています。
 これまでの米政策を改め、農家が、安心して米の増産に取り組める政策を直ちに明確にし、消費者米価が安定し安定的に供給されるよう求めます。
 小泉大臣が就任された直後、5月28日の食糧部会では、これまでと同じように人口が減るから米需要は毎年10万トン減るとの考えを改めず、この5年間の平均需要703万トンを無視して需要674万トンと見立て、従って米生産量も683万トンと従来通りです。このままだとまた過ちを繰り返すことになります。
 それとも、米不足を常態化させ、海外からの米輸入の拡大に道を開く考えでしょうか。トランプ関税で米を交渉カードに差し出すことは絶対反対です。
 私たちは、生産者も、消費者も、そして米屋さんも安心できる米政策の転換を強く求めます。